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2020年7月6日から7月8日にかけ、活発化した梅雨前線による「線状降水帯」がもたらす豪雨が九州地方を襲いました。この「令和2年7月豪雨」により大分県の国道210号近傍では2日間の累積降水量が7月の平均降雨量の1.6倍の600㎜に達し、多くの河川の氾濫や土砂災害が発生しました。国道210号では豪雨により法面崩壊や道路の陥没等50か所以上の被災が確認され、中でも大分県日田市の天瀬町赤岩地区では玖珠川沿いの道路が最大幅約16m、延長約100mに渡って大規模に崩壊し、約1kmの区間が41日間、全面通行止めになるなど、深刻な被害が発生しました。
応急復旧により片側交互通行での通行は再開されましたが、対面2車線の確保とさらなる安全確保のための本復旧の工事が行われることとなり、崩壊した約100mの区間の内、東側50mの本復旧工事を当社が施工しています。2022年10月の完成を目指し、現在も水位上昇の予測をして警戒態勢を取りながら工事が進められています。
- 工事概要
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- 事業主
- 国土交通省九州地方整備局
- 設計者
- 東洋技術株式会社
- 工事場所
- 大分県日田市天瀬町赤岩
- 工期
- 2021年5月~2022年10月(予定)
- 工事概要
- 道路修繕
- 護岸工
- 鋼管杭工直径1,500mm 長さ26.5m 28本
直径318.5mm 長さ26.5m 27本 - コンクリート被覆工 被覆パネル工 531㎡
アンカー工 直径146mm 28本
施工ヤード復旧工、構造物撤去工、仮設工

写真左半分の工区の施工を当社が担当。写真手前を流れるのは玖珠川。国道210号線の奥に見えるのはJR久大本線
二次災害の防止 ~安全確保を徹底した施工~
玖珠川沿いの道路の被災箇所は、袋詰め玉石と大型土嚢による応急復旧で仮の護岸が施されている状態でした。本工事ではこの仮護岸に代え、回転圧入による鋼管杭とグランドアンカーでの本復旧を行っています。
現場は背後が線路を挟んですぐ山になっており、河岸には十分な作業スペースがありません。そのため玖珠川の流れを変える「瀬替え」により河川内に作業スペースを造成していますが、元々河川だった場所での施工のため、出水期には計画高水位が施工ヤードより6mも高くなるなど、豪雨時には事前の速やかな退避による安全確保が不可欠です。
復旧工事中の2021年8月12日、再び赤岩地区を豪雨が襲いました。本作業所でも施工ヤードと搬入路が流失する被害が発生しましたが、事前の豪雨浸水の予測と避難指示により退避していたため、幸いにも人員・機材の損害はありませんでした。その後施工方法の検討を行い、2021年9月から施工ヤードと搬入路の復旧を開始。11月には復旧が完了し工事を本格的に再開しています。
復旧工事に使用する鋼管杭
鋼管杭の施工状況 災害に強い道路に生まれ変わる
鋼管杭工・アンカー工は昼夜兼行で施工
DX技術の導入 ~杭精度管理システムで高品質・高効率の施工を実現~
鋼管杭の施工に当たっては施工精度の管理に杭精度管理システム「インプラント NAVI®」を導入しています。インプラント NAVIは圧入中の鋼管杭の貫入深度や変位、傾斜などの情報をリアルタイムで取得し、高精度な施工品質を確保するとともに、各種の出来形資料も自動で作成し、3次元モデルの作成を統合管理できるシステムです。
計測結果はBluetooth®で場内のパソコンに図と数値で表示され、施工管理担当者の携帯端末や現場事務所、九州支店、本社技術部でも閲覧を可能にし、遠隔で施工状況を確認できる体制を構築しています。

※インプラント NAVIは、(株)技研製作所とシーアイテック(株)の登録商標です。

施工現場から
九州支店 土木部 作業所長岩佐 昇
2022年6月、鋼管杭の施工とアンカー工事が終了し、足場の撤去が完了したところで九州地方は被災から三度目の梅雨を迎えました。出水期(河川の増水期)の施工では、足場など資機材の流出の可能性も想定されることから、鋼管杭の表面被覆工を現場でのコンクリート打設による施工方法から工場製の二次製品を使用する方法に変更するなど、再びの豪雨発生に備えて施工計画を検討しています。豪雨発生時には安全に退避できるよう、空振りはあっても見逃しがないよう工事全体を把握し、作業ごとの安全を確認しながら慎重に進めてまいります。
観光名所(慈恩の滝、道の駅など)に近く、地域住民の生活に欠かせない道路の一日も早い復旧のため、作業所一丸となって取り組んでまいります。