CSR
気候変動への具体策 ~錢高組の「脱炭素化」の取り組み~
近年、災害の激甚化や地球温暖化などの気候変動による影響が世界的な解決課題として顕在化しています。これを受け、気候変動に対する具体的な解決策として、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量削減を目指す「脱炭素化」に向けた取り組みが世界全体で加速しています。
建設業においても、脱炭素化への対応が重要な経営課題となっています。
建築物の施工の際に、また竣工後お客様が使用される際に多くの資源やエネルギーを消費し、CO2などの温室効果ガス発生の一因となっています。
当社は施工時の工夫や技術開発など、様々な取り組みを通して、「脱炭素化」を実現する具体策にスピードを上げて取り組んでいます。
CO2削減の目標設定
我が国は温室効果ガスを2030年度までに2013年度対比で46%減とする削減目標を掲げたほか、建設業界においても、当社が加盟する日本建設業連合会(日建連)が施工段階におけるCO2排出量を2030年度から2040年度の出来るだけ早い段階で、2013年度対比で40%削減する目標を掲げています。
これらを受け、当社は脱炭素の全社目標として、2030年度に、2012年度から2014年度の3年度平均値対比で、施工段階におけるCO2排出量の40%削減※、さらに2050年度にCO2排出実質ゼロの達成を目指します。
この目標達成のため、当社では社内に社長を委員長とする「環境経営委員会」を設置し、傘下の各ワーキンググループにて脱炭素化に向けた取り組みを組織横断で進めています。
脱炭素化の取り組みを通してお客様の一層の企業価値向上の実現を図るため、当社では設計段階・施工段階の各プロセスで、脱炭素化の具体策の検討を進めています。
設計段階の脱炭素化への取り組みとしては、省エネルギー型建築物の設計提案やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計手法確立に向けた研究や、各種の環境配慮型認証技術の取得、脱炭素素材・構工法の開発に取り組んでいます。
また施工段階では代替燃料の使用や環境対応型電力など再生可能エネルギーの採用を進めるほか、環境対応型仕上材や低炭素アスファルト、環境配慮型コンクリートの適用拡大に向けた研究等をスピードを上げて進めています。
目標値は施工高1億円当たりの排出量(原単位)で設定
脱炭素化に貢献する建材の開発 ~環境配慮型コンクリート「CELBIC」~
コンクリートの構成材料のひとつであるセメントは、石灰石や粘土等の原料を1,300℃以上の高温で焼いて製造されますが、この時に大量のCO2が排出されます。このセメント生産に伴うCO2排出量は、電力、鉄鋼に次いで多く、我が国の温室効果ガス総排出量の約4%を占めています。このため、建設業界では、構造材料として最も使用量の多いコンクリートのCO2排出量削減が重要な課題となっています。
そこで、産業副産物を混和材として積極的に使用することによるCO2排出量の削減を狙い、当社をはじめとしたゼネコン13社「CELBIC研究会」※で共同開発を行ったのが、環境配慮型コンクリート「CELBIC(セルビック)」です。
CELBICの特徴
CELBICは混和材に「高炉スラグ微粉末」を用い、これをセメントの一部と置換することによりコンクリート中のセメント量の削減を図ったコンクリートです。高炉スラグ微粉末は製鉄所の副産物として発生するものですが、製造時にすでにCO2を排出しており、セメントとの置き換えによる排出はないため、セメントと置き換えた分が排出削減となります。また、高炉スラグ微粉末はセメント同様に、水で硬化する水硬性があるため、最終的に得られるCELBICの強度は従来のコンクリートと同様です。CELBICは製鉄所の副産物を再利用するため、CO2排出削減のほか、廃棄物量削減の面でも地球環境の改善に貢献することができます。
CELBIC研究会では、高炉スラグ微粉末の使用率に応じてA種、B種、C種の3種類のクラスを設定し、(一財)日本建築総合試験所より建設材料技術性能証明を取得しました。A種は高炉スラグ微粉末の使用率が最も低く、一般的なコンクリートと同様の品質で、使用箇所に捕らわれることなくCO2排出量を9~28%削減可能です。C種は使用箇所が地下構造物等に限定されますが、高炉スラグ微粉末の使用率が最も高く、最大で60%以上ものCO2排出量削減が可能です。このように使用箇所に応じて使い分けることで、コンクリートの耐久性を十分に確保しながらCO2排出量削減を実現することができます。なお、CELBICはJIS規格に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会13社の責任において施工することとなります。
CELBIC研究会は、ゼネコン13社(錢高組、長谷工コーポレーション(幹事)、青木あすなろ建設、淺沼組、安藤ハザマ、奥村組、熊谷組、鴻池組、五洋建設、鉄建建設、東急建設、東洋建設、矢作建設工業)で構成されています。
ZEBの実用化に向けた研究開発
建築物でのエネルギー消費を抑えればCO2削減効果が期待できますが、エネルギー使用量をゼロにすることはほぼ不可能であると考えられています。一方で、例えば太陽光発電パネル等を活用することで、建築物でエネルギーを生産することも可能です。この「消費するエネルギー」を削減し、「生産するエネルギー」を増やすことで、差し引きでエネルギー消費量ゼロの建築物を実現するのがZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の考え方で、当社もZEBの実用化に向け、実際の施工物件をモデル建物とした研究を進めています。
省エネ建築の施工実績
当社ではこれまでにも省エネ性能の高い建築の施工を行ってまいりました。先進的な省エネ技術の実証施設として2014年に千葉県柏市に完成した「三井不動産 柏の葉スマートシティ・ゲートスクエア」は環境共生型のショップ・オフィス施設とホテル・レジデンス施設からなり、街区を超えて電力を融通しあう日本初の本格的な「スマートグリッド」の要となる先進的な施設です。自然通風や地中熱利用、太陽光利用給湯、太陽光発電、光ダクトシステムなど様々な環境関連技術を導入し、基準CO2排出量に対して43.9%の削減を達成しました。本施設はCASBEE(建築環境総合性能評価システム)で最高位のSランク認証のほか、国際的な環境性能認証制度「LEED」の街づくり部門の計画認証において、最高ランクとなる「プラチナ認証」を日本で初めて取得しています。そのほかにも本施設は2016年度の電気設備学会賞(技術部門施設奨励賞)を受賞するなど、その先進的な取り組みに対して高い評価をいただきました。
実物件でのZEB化シミュレーション
当社では実際に施工中の物件をモデルとして、要素技術の追加やスペック変更等の様々なシミュレーションを行い、データの蓄積と検証を進めています。現在施工中のオフィスビルをモデル物件とした例では、窓ガラスの断熱性能や照明器具・空調機等の性能の条件を様々に変更し検証することで、どのような取り組みが効果的か、どのような組み合わせが省エネに最適であるかなどのデータ収集を進めています。
マテリアルフロー
脱炭素化に向けた足元の状況としては、当社の作業所・オフィスにおけるCO2の総排出量は年々減少しているほか、完成工事高1億円当たりの排出原単位も減少傾向にあります。原単位排出量はトンネル工事など、エネルギー使用量の多い工事の工事量によって変動する要素もあります。
全社的に見れば作業所における省エネ型重機やICT重機の使用、アイドリングストップ等、またオフィスでは、照明のLED化、省エネ型空調設備への更新による、各種の脱炭素化の施策の効果が実績としてあらわれてきたと見られます。当社は引き続き、CO2排出削減に向けた具体策を進めてまいります。
主なグリーン調達品
- 型鋼(電炉)5,794t
- 高炉セメント3,713t
- エコセメント・コンクリート製品6t
- 透水性舗装384㎡
- 再生アスファルト合材2,199㎥
- スラグ路盤2,411㎥
- 再生砕石11,025㎥
- 再生砂3,499㎥
- 再生安定処理土348㎥
- 流動化処理土3,792㎥
- 土壌改良(固化)材4,585㎥
- 代替型枠(打込み型枠等)12,537㎡
- 断熱材
(グラスウール・ロックウール)81,038㎡ - パーチクルボード1,091㎡
- 木質系セメント板28㎡
- エコクロス2,645㎡
- 石膏ボード139,184㎡
- 岩綿吸音板9,886㎡
- 塩ビ系床材9,093m
- 再生硬質塩ビ管975枚
- 断熱サッシ・ドア724台
- ガスヒートポンプ冷暖房機117台
- LED照明器具13,744㎡
- 日射調整フィルム63㎡
- 屋上緑化・壁面緑化291㎡
建設廃棄物 12.9万t
- 建設汚泥6.4万t
- 木くず0.3万t
- コンクリート塊4.6万t
- 混合廃棄物0.3万t
- アスファルト塊0.7万t
- その他0.5万t
最終処分量 0.2万t