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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2021-No.46

論文・報告

1

床スラブとの合成効果に期待した鉄骨梁横補剛工法 -最上階梁についての有限要素法解析-

五十嵐治人 相羽均修

論文

H形鋼鉄骨梁と鉄筋コンクリート造床がシアコネクタで結合された合成梁は、上フランジが材軸直交方向への変形を拘束され、横座屈(梁が曲げを受けた際に材軸直交方向に倒れる現象)に対する抵抗性が向上する。これまで、この効果を積極的に評価して、横座屈防止に必要な横補剛材を省略する工法を開発した。しかし、開発工法は中間階で上下階の柱と剛接合された状態で検討しており、最上階、もしくはセットバックして上階がない場合については未検討である。実際には、上階に柱がない場合は下階柱頭の降伏が先行し、梁は建物メカニズム時まで横座屈を起こさない場合が多い。しかしながら、それを理由として横補剛材を省略するには、別途検討が必要となる。そこで、上階柱がない場合の合成梁の横座屈に対する抵抗性について FEM 解析を用いて検討した。その結果、本工法は上階に柱がない場合についても同様に評価できることが分かった。

key words:鉄骨梁、横座屈、床スラブ、シアコネクタ、有限要素法解析

2

高炉スラグ微粉末を混和材として用いたコンクリートの性状 その5 床部材実験

薗井孫文

論文

建設業界においては、他業種よりエネルギーの消費量や二酸化炭素の排出量が多く、特に構造材料として最も使用量が多いコンクリート分野では、二酸化炭素排出量の削減といった課題は重要であるとともにSDGs の達成につながると考えられる。そこで、これまでに高炉スラグ微粉末を幅広い使用率で混和材料として用いたコンクリートについて検討を行うことを目的として、その1、2では室内試験練り、その3、4では実機試験練りについて報告してきた。その5では、床部材における強度発現性を確認した実機実験について報告する。

key words:環境配慮型コンクリート、高炉スラグ微粉末、床部材、強度発現

3

無線式山留め壁変位計測システムの検証

相羽均修 安部 剛 五十嵐治人 薗井孫文

論文

建設現場で山留め壁の変位計測は、長期間、安定した計測が求められるため、一般的には有線で接続する差動トランス式傾斜計を用いたシステム(以下、有線式)で構築される。この方式は、配線および多数の機器設置が必要であるが、無線式のシステムを構築できれば大きな省力化に繋がる。しかし、無線式の新しいシステムを現場に導入するためには、傾斜計自体の精度のほか、設置方法および通信性能を含めたシステム全体の検証が必要である。そこで、実現場において無線通信で接続するデジタル式傾斜計を用いた山留め壁変位管理システム(以下、無線式)を実験的に導入し、約6 か月間の計測を実施した。その結果、導入した無線式の計測精度は従来の有線式と同等であり、920MHz 帯の電波を用いた無線モジュールでシステムを構築することで、安定して長期間計測できることが分かった。

key words:山留め壁、変位計測、無線式、デジタル式傾斜計

4

東北中央自動車道 伊達大橋の施工 -東北自動車道 阿武隈川橋上部工工事-

櫻井尚久 越山耕次 大橋駿希 堀 桜花 上田高博

論文

東北中央自動車道(相馬福島道路)は、常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ約45 ㎞の自動車専用道路であり、東日本大震災からの早期復興を図るリーディングプロジェクト(復興支援道路)として位置づけられ、整備が進められた。このうち、当社にて施工した東北中央自動車道 伊達大橋(工事名称:阿武隈川橋上部工工事)は、国道115 号相馬福島道路における「霊山~福島」区間のうち、福島県伊達市伏黒~伊達市岡沼地内に位置し、一級河川阿武隈川を渡河するPC4 径間連続箱桁橋である。本橋は、当区間における単独の橋梁としては、最大規模の橋梁である。基礎形式は、堤外に位置するP1・P2 橋脚はニューマチックケーソン基礎、堤内に位置するP3 橋脚、A1・A2 橋台は杭基礎を採用している。上部工は、PC4 径間連続箱桁橋であり、移動作業車(ワーゲン)を用いた張出し架設工法により施工を行った。本報では、主として本橋の上部工の施工に関して報告する。

key words:復興支援道路、河川内施工、大型免震ゴム支承、張出し架設

5

急峻な落石傾斜地の道路直上でのトンネル到達部の施工 -国道158 号奈川渡2号トンネル-

森川淳司

論文

本工事は、奈川渡ダム下流に、防災や線形改良等を目的として、2 本のトンネルと1 本の橋梁により計画する延長2.2km の改良事業である。当該地域は、上高地、白骨温泉、乗鞍高原等の観光名所が点在するため、事業による安全な走行や移動時間短縮、観光産業の活性化にも期待されている。本工事は同事業のうち、(仮称)奈川渡2号トンネルをNATM 工法で建設する工事である。このうち到達側坑口は、亀裂質な花崗岩が分布し、凹地形に土砂や転石を包有する急傾斜地にあり供用中の国道直上に計画されている。
本報では、伸縮ダクトと換気装置の自動制御による作業環境改善および転石の散在する急傾斜地形における供用中の現道に配慮した到達部の施工について報告する。

key words:トンネル到達部、急傾斜地、落石防止対策、伸縮ダクト、換気装置、自動制御

6

鉄道営業線近接での開削工事における土留め背面地盤の挙動 -東海道線支線北2地区T新設他工事-

丸山達彦 米澤伸祐

論文

西日本旅客鉄道株式会社の東海道線支線地下化・新駅設置事業は、大阪駅北地区の西端地上を南北に走行している東海道線支線を大阪駅側に移設・地下化することにより、鉄道と道路との交差部分の解消を図る工事である。本工事では、柱列式土留め壁を用いた開削工法により地下構造物を構築する。過去の大阪平野での開削トンネル工事において、軟弱粘土地盤を開削掘削中に土留め壁の水平変位が設計値を上回る報告がなされており、本工事でも同様の事象が懸念された。本報では、軟弱粘土地盤において営業線から離れた先行工区での土留め壁、背面地盤の変形挙動の解析と実測値を対比し、営業線近接の後行工区における土留め計画の妥当性を検証した結果を報告する。

key words:開削、土留、鉄道、軟弱地盤

7

PC-S・PCaPC 造による免震建物の施工 - ゆうちょ銀行施設新築工事 -

土肥和也 菊澤宏司

論文

ゆうちょ銀行の施設新築工事において、PC-S・PCaPC 造による免震建物の施工に先立ち、使用する免震装置下部プレートと基礎コンクリートとの間に空隙ができないようにコンクリートによる充填性確認を目的とする実大試験を行った。
また、PC-S・PCaPC 造は施工実績が少ないハイブリット構造であり、PC 柱とPC 梁とPC-S梁が取り合う部位での不具合を発生させないための事前確認・検討を行うことを目的として、実施工前に試験体による施工試験を行った。本報では、それらの試験結果と施工方法について報告する。

key words:免震装置下部プレート、充填率、PC-S、ハイブリット構造

8

大阪中之島の新しい文化拠点文化ハブ『大阪中之島美術館』の施工 -(仮称)大阪新美術館建設工事-

柳田 茂 檜垣真由

論文

設計コンペによって選ばれた本建物は、外壁については1 階の大部分と2 階はガラスカーテンウォール、3~5 階は黒色材料を使ったPC 版で構成されており、黒色の立方体が宙に浮いている印象を与える。内部はパッサージュと呼ばれる吹き抜けの内部遊歩道で立体的に繰り抜かれるという複雑な空間構成となっており、鉄骨建方時には最終的に計80 本の仮設支柱を配置して施工した。

key words:スーパーホットコラム、吹き抜け空間、仮設支柱、衝突ばね鉄骨、建方シミュレーション

9

IT・ICT 建設技術の試行と検証 -(仮称)株式会社キョクレイ本牧物流センター -

土屋 勉 米倉史和

論文

本工事は、横浜市山下ふ頭へのIR(統合型リゾート施設)誘致に伴う湾岸倉庫の移転新設工事である。時代の先を見据えた建設工事の省力化、合理化の先鞭となるべく、IT・ICT技術を取り入れた先進の施工法を採用した。その中には試行に終わった技術もあったが、近い将来建築現場の標準となる技術も多くあった。本報では、その概要と成果について報告する。

key words:杭頭免震構造、PCaPC 構造、防熱工事、IT・ICT 機器、マイクロドローン