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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2024-No.49

論文・報告

1

床スラブとの合成効果に期待した鉄骨梁横補剛工法 -シアコネクタの性状とFEM 解析-

五十嵐治人 相羽均修 土方勝一郎

論文

鉄骨梁の横座屈を防止するために、シアコネクタで合成された床スラブを横補剛材として積極的に評価する鉄骨梁横補剛工法「YZ 補剛工法」を2019 年に開発し、この程、シアコネクタの配置制限の緩和、床スラブの開口制限の緩和を可能とするなど4 点の工法の改良を行った。これに関するフレーム構造実験の結果は、詳細を既報1)にて報告している。
YZ 補剛工法は、シアコネクタの性能(せん断剛性、せん断耐力、回転剛性、曲げ耐力)の評価が重要である。本報は、既報で報告しなかった要素実験によるシアコネクタの性能の評価、および妥当性を確認した性能の評価方法に基づいて検討を行った有限要素法(以下、FEM)解析結果について報告する。この結果、既往のシアコネクタの性能の計算式は概ね妥当であり、かつ安全側に評価できることが分かった。また、各要素の性能を既往の算定式に基づいて行ったFEM 解析は、実験結果を適切、かつ安全側に評価できることが分かった。

key words:鉄骨梁、横座屈、床スラブ、フレーム実験、シアコネクタ、FEM 解析

2

現場で発生するスラッジ水を利用したCO₂ 固定化技術の開発

角田晋相 相羽均修 榊原弘幸

論文

2050 年カーボンニュートラル実現に向け、CO₂排出量の削減について具体的な行動が求められる中、建設分野では環境配慮型コンクリートの使用など材料面でのCO₂ 排出量削減に向けた取り組みが多く実施されている。一方、建設現場では内燃機関による建設機械への依存が高く、施工段階におけるCO₂ 排出量(Scope1、Scope2)では排ガス由来のCO₂ 排出量が大部分を占めている。
著者らは、排ガスに含まれるCO₂ をコンクリートの洗い水等のスラッジ水に含まれるカルシウムイオンに炭酸カルシウムとして固定化し、コンクリート材料として再利用する方法について検討を進めている。ここでは、スラッジ水のミスト噴霧による室内実験を行い、CO₂の反応効果と生成物のコンクリート材料としての適用性について確認した結果について述べる。

key words:カーボンニュートラル、CO₂ 固定化、コンクリートスラッジ、ミスト噴霧

3

高速ろ過施設における躯体コンクリートのひび割れ制御対策について - 中部水再生センター高速ろ過施設築造工事 -

北澤英樹 福代 敬 高野治久

論文

本工事は横浜市中部水再生センター内において、油性スカムの流出対策として高速ろ過施設を築造するものである。本工事は躯体の構築のみを行い、次期工事にて高速ろ過の設備工事が行われる。今回構築する躯体は水槽構造となっているほか、水槽構造に囲まれたバルブ室兼機械室があり高い水密性が求められていることから、ひび割れによる漏水防止対策を実施した。本報告では、①温度応力解析による中庸熱ポルトランドセメントへの変更 ②誘発目地の追加 ③ひび割れ制御鉄筋の追加について報告する。

key words:高速ろ過施設、温度応力解析、中庸熱ポルトランドセメント、ひび割れ誘発目地、ひび割れ制御鉄筋

4

脆弱地質層と重金属含有区間における山岳トンネル施工 - 令和2 年度153 号新伊勢神トンネル工事 -

森川真圭 白田克大 松島 睦

論文

本工事は、愛知県東部に位置する国道153 号伊勢神トンネルの断面不足の解消、トンネル前後の急カーブ・急勾配区間の解消により、幹線道路としての機能確保を目的とした新たなトンネルを築造する工事である。支保パターンの大半がCⅡ-b であるが、中央以奥ではDⅠ、DⅡを主体とする脆弱な地山である。また、その地質は、主に花崗閃緑岩と片麻岩で構成され、片麻岩区間では自然由来の重金属類である砒素の含有が確認された。
本報告では、トンネル掘削時に採用した各種掘削補助工法と自然由来の重金属類に対応したトンネル施工方法、施工管理について報告する。

key words:掘削補助工法、早期閉合、先進調査ボーリング、自然由来の重金属類

5

地盤改良体の摩擦抵抗を考慮した盤ぶくれ対策 -なにわ筋線西本町駅部土木工事-

中山 駿 中川達也 友近宏治

論文

なにわ筋線は、2023 年春に開業した大阪駅(うめきた地下駅)と関西本線の JR 難波駅および南海本線の新今宮駅を連絡する新たな鉄道路線(なにわ筋線)の建設事業である。(仮称)西本町駅部では躯体工事に伴う掘削時(施工延長 340m、掘削幅 21.0m~27.0m、掘削深GL-24.0m~31.0m、掘削土量 約189,710m3)に盤ぶくれが起こる可能性がある。本報告は、地盤改良体の摩擦抵抗を考慮した盤ぶくれ対策について報告するものである。

key words:地盤改良工、盤ぶくれ、高圧噴射撹拌工法、SUPERJET 工法

6

多種工法を組み合わせた鋼管杭の施工 - JX 金属日立事業所RCFC 工場建設工事 -

越智貴紀

論文

本工事は、山間の谷間でかつ河川に隣接した立地での工場建設工事である。建設地の地盤表層(GL-2~10m)は1m 程度の転石を多く含む硬質地盤であり、支持層は起伏に富む複雑な地層構成である。このため、杭工事においては工期短縮を図りつつ、杭先端が支持層に確実に根入れできる工法が求められた。
本報告では、拡径式ダウンザホールハンマー工法、バイブロフォンサー工法、フライング油圧ハンマー工法を組み合わせた鋼管杭の施工法について報告する。

key words:硬質地盤、拡径式ダウンザホールハンマー工法、バイブロフォンサー工法、フライング油圧ハンマー工法

7

日本初進出ブランドホテルの市街地での建設 - 京町堀1丁目計画 -

乾 拓男 井上健太 吉原実南

論文

「voco 大阪セントラル」は、IHG ホテルズ&リゾーツが展開するvoco ブランドの日本初進出として注目を集めたホテルである。内装デザインに金属製の特殊加工を施した天井材のティンシーリング、古民家再生木材等を活用した木フレーム、特注で製作したカーペットクロス等、内装、外装ともに細部にまで気を配り、質を追求した独創性、新規性の高い建物である。本報では、フロアクライミング工法によるクレーン計画やモックアップルームの設置、BIM、3D カメラ等の活用によりコロナ禍でも海外担当者等と迅速な合意形成を図った状況について報告する。

key words:フロアクライミング工法、モックアップルーム、設備BIM、合意形成

8

鉄筋先組工法とハーフPCa工法の組み合わせによる工程短縮効果 - 那覇第2合同3号館(R3)建築工事 -

井関将人 永冨浩之 杉中健伍

論文

那覇第2 地方合同庁舎3 号館は、地域の防災拠点として、近辺に点在していた沖縄気象台や沖縄総合事務局南部国道事務所、沖縄総合通信事務所、沖縄地区税関などが入居する建物である。災害応急対策に従事する官署等を集約することで施設の分散等の解消を図り、災害発生時の連携を強化して、災害に強い地域づくりを支援し、魅力あるまちづくりに貢献する。
本報告では、鉄筋先組工法とハーフPCa 工法の組み合わせによる工程短縮効果と不発弾調査方法について報告する。

key words:鉄筋先組工法、ハーフPCa 工法、不発弾調査