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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2023-No.48

論文・報告

1

高強度開孔補強金物を用いた大開孔を有する基礎梁の曲げせん断実験

五十嵐治人 相羽均修 土方勝一郎

論文

一般に、直径600mm の人通孔を有する鉄筋コンクリート造の基礎梁は、梁せいが1,800mm以上必要となる。この梁せいを1,500mm まで縮小できる技術について既報1)2)で報告した。今回は、開孔補強金物について、軽量で施工性に優れた高強度せん断補強筋を使用した製品に限定し、構造実験を実施した。
着目点は、①開孔直径と梁せいの比、②開孔部補強筋(孔際補強筋、開孔補強金物)、③コンクリート強度、④開孔上下の配筋仕様、の他、既報1)2)では開孔はスパン中央に1 個のみの状態しか確認しなかったが、⑤開孔のスパン方向の位置、隣接する小開孔の有無についても、その終局耐力への影響について確認した。
結果として、①~③に関しては修正広沢式4)によって終局耐力を適切、かつ安全側に評価できること、④に関しては一定量の配筋をすれば、終局耐力に影響を及ぼさないことが分かった。⑤に関しては開孔位置、他の小開孔との離隔距離のいずれについても、既往の規定を満足した状態であれば、終局耐力に影響を及ぼさないことが確認できた。

key words:鉄筋コンクリート、基礎梁、貫通孔、開孔補強金物、構造性能確認実験

2

床スラブとの合成効果に期待した鉄骨梁横補剛工法 -YZ 補剛工法の改良-

相羽均修 五十嵐治人 土方勝一郎

論文

鉄骨梁の横座屈を防止する手段として、横補剛材を設けることが一般的であるが、横補剛材、ボルト、ガセットプレートなどが必要となり、コスト、工期の面では好ましくない。一方、梁上に設けるシアコネクタにより床スラブと合成構造とすることで、横補剛材と同等の効果を期待できる。2019 年に2 列配置のシアコネクタにより床スラブと合成構造を成す鉄骨梁の横座屈性状を実験的、解析的に検討し、床スラブによる鉄骨梁の補剛効果を期待した工法(YZ 補剛工法)を開発した1)。しかし、シアコネクタの配置や床開口等に制限があるため、適用範囲が限定されている。
そこで、これらの制限緩和と作業効率の向上を目的として、梁鉄骨サイズや床スラブの種類、開口の配置等を実験パラメータにした正負交番繰り返し載荷実験を行い、構造性能を確認し適用範囲を拡大した。

key words:鉄骨梁、横座屈、床スラブ、フレーム実験、シアコネクタ

3

自動検査システムおよび建設ロボットの現場試行

相羽均修 井関将人 正垣遥一

論文

建設分野の生産性向上を図る方策として、自動検査システムの活用や二次的な作業である清掃や運搬の省力化を優先的に進めるべきであると考えられている。現在、建設分野では高齢化が進み、新しい担い手が不足している。また、施工検査においても従来は検査によって不具合を指摘された箇所とその是正結果の記録が中心であったが、近年はトレーサビリティーの重要性の高まりから、検査で適正であった箇所も含め、全箇所の検査記録が求められている。この全箇所検査記録の管理は、記録業務の工数を増加させる要因となる。
そこで、自動検査システム(AI ガス圧接継手検査システム、3 眼カメラ配筋検査システム)と清掃ロボットを現場試行し、検査精度や生産性向上の効果を確認した。

key words:DX、デジタルデータ、建設ロボット、配筋検査、自動清掃

4

低土被りの山岳トンネル工事における調査・施工 - 国道6 号勿来トンネル工事 -

土岐純也 桐木俊之

論文

本工事は、国道6 号の茨城・福島県境付近における渋滞緩和、津波浸水区間の回避を目的として整備が行われている勿来バイパスのうち、福島県区間のトンネル工事である。全長L=779m のトンネルをNATM 工法で掘削するもので、全線において支保パターンはDⅠおよびDⅢa となっており、低土被り区間が存在する。
本報では、低土被りのトンネルにおける地質調査・補助工法の選定およびインバートコンクリートにおける湿潤養生について報告する。

key words:電磁探査、低土被り、早期閉合、インバート養生

5

高橋脚におけるマスコンクリート対策および高流動コンクリートの施工 -新名神高速道路高槻高架橋東(下部工)工事-

鈴木孝幸 大橋駿希 中尾友哉 松浦志就 近藤 連 東海林瞬 秋山 博

論文

本工事は、新名神高速道路高槻高架橋のうち、橋脚16 基を構築する橋梁下部工工事である。マスコンクリート対策として、フーチングに対してはパイプクーリングを、過密配筋の橋脚充実部(基部および梁部)には、低熱ポルトラドセメントを用いた。
P8 橋脚は東上部工(鋼7 径間連続板桁)と西上部工(鋼11 径間連続(箱桁+板桁))の掛違い橋脚となっている。このため梁部には、コンクリート製の落橋防止構造と段差防止構造を兼ね大きな突起を設けており、鉄筋を3D 化したところ鉄筋のあきが32 ㎜と非常に狭くバイブレーターの挿入が困難であり、締固めが不可能であった。また、梁部はマスコンクリート対象箇所であり、鉄筋過密部であるため分割しての打設が困難であった。このため、自己充填可能な高流動低熱コンクリート(自己充填性ランク1)を採用した。低熱セメントおよび増粘剤を用いて試験練りを繰返し、実機試験による試験施工を行った後、本施工に臨んだ。低熱ポルトランドセメントを用いた高流動コンクリート(自己充填性ランク1)は西日本高速道路株式会社管内では初の試みであった。

key words:マスコンクリート、低熱ポルトランドセメント、パイプクーリング、高流動コンクリート、増粘剤系、自己充填性ランク1、過密鉄筋

6

オープンケーソン工法による立坑築造時の躯体コンクリートの品質確保 -観音地区下水道築造2-1号工事-

吉岡圭介 木野村達哉 東海林瞬

論文

本工事は広島市太田川近傍にて、雨水幹線シールド工事の発進立坑をオープンケーソン工法により構築するものである。立坑は河川の近傍に位置し、地下水位が高いことから、水密性が求められた。また、立坑は壁厚1.8m、高さ44.0m であり、新設リフト下端が既設リフトにより拘束される壁厚の大きな構造物であるため、温度応力によるひび割れが懸念され、温度応力解析を実施した。本解析ではオ-プンケーソン工法の特徴である沈設作業を再現することで解析精度の向上を図った。
本工事における3 つの品質向上への取組みを以下に示す。①事前検討において、立坑躯体の最大ひび割れ幅を算出することで水密性の評価を行い、補強鉄筋の配置など特別なひび割れ防止対策が不要であることを確認した。②立坑躯体の温度の実測値と温度応力解析結果と比較し、ひび割れ発生確率が解析結果よりも大きくなる場合には、養生条件を適正化することでひび割れ発生確率を減少させた。③立坑打継面および外周面へのコンクリート改質剤の使用により、躯体表面を緻密化し水密性の向上を図った。
工程短縮を目的として、ノーセパ型枠を使用した。通常の型枠組立日数が1 リフトあたり10 日間であるのに対し、5 日間の工程短縮となった。これに加え、躯体にセパレータ孔がなくなることで水密性の向上にも寄与した。

key words:オープンケーソン工法、温度応力解析、コンクリート改質剤、ノーセパ型枠

7

狭隘部における鋼製地中連続壁の施工 -なにわ筋線西本町駅部土木工事-

米澤伸祐 中川達也 友近宏治

論文

なにわ筋線は、2023 年春に開業した大阪駅(うめきた地下駅)と関西本線のJR 難波駅および南海本線の新今宮駅を連絡する新たな鉄道路線(なにわ筋線)の建設事業である。(仮称)西本町駅部は開削工法にて築造され、本工事に採用された鋼製地中連続壁は2 期(東西)に分けて施工される。本報では、1 期工事(東側)である民地境界との狭隘な場所で施工した鋼製地中連続壁工事について報告する。

key words:民地境界、既存構造物、鋼製地中連続壁、嵌合継手

8

病院建設におけるPC 工事 - 九州大学(医病)別府病院病棟・診療棟等新営その他工事 -

宮本文宏 磯貝克巳 楠 勇気 小笠原蓮 高橋洋平

論文

本工事は、国立大学法人九州大学より発注された稼働中の病院敷地内における新病院棟と付属施設等の増築工事であり、手術室等の用途上大空間が求められる部分にはプレストレストコンクリート(PC)梁構造が採用されている。
本報では、PC 梁構造の施工と内装工事の早期着手のために採用したスマート工法(型枠支保工)ついて報告する。

key words:ポストテンションPC、大空間、型枠支保工、内装工事早期着手

9

寒冷地における寒中コンクリートの施工 -葛巻町新庁舎建設工事(Ⅰ期・建築工事等)-

川畑 翼

論文

本工事は、躯体上棟工程を冬期間に入る前の2021 年11 月末に設定していたが、アンボンブレスの施工を含めた工程遅延等により、厳冬期に躯体工事を継続することになった。
本報では、葛巻町新庁舎建設工事(Ⅰ期)の冬期間におけるコンクリート工事において、凍害による硬化不良、豆板、強度発現不足等を防ぐために実施した、寒中コンクリートの施工管理について報告する。

key words:寒冷地、寒中コンクリート、採暖、温水、耐寒促進剤