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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2022-No.47

論文・報告

1

杭頭免震建物の杭応力評価に関する検討 -最上階梁についての有限要素法解析-

相羽均修 五十嵐治人 土方勝一郎

論文

従来、杭基礎構造物の2 次設計では、地盤変位と構造物慣性力を個別に杭に作用させ、それらの二乗和平方根で杭応力を求める手法が用いられてきた(以下、SRSS)。一方、建築基礎構造設計指針1)(以下、基礎指針)に示されるように、軟弱地盤におけるレベル2 地震のように水平地盤反力と杭体のM-φ関係の非線形性が強いケースでは、杭応力の重ね合わせは成立しないため、地盤変位と構造物慣性力を同時に杭に作用させる(以下、同時載荷)ことが合理的と考えられる。本報では、物流倉庫で採用される、建物の固有周期Tb が地盤周期Tg より長い(Tb/Tg>1)杭頭免震建物を対象として、SRSS および同時載荷で算定した杭の応答値を比較検討した。その結果、同じ建物、地盤条件で慣性力と地盤変位による外力を SRSS によって評価した結果と、同時載荷の結果の包絡値は概ね同等であることが分かった。

key words:杭頭免震、物流倉庫、2 次設計、場所打ち杭、すべり支承、応答変位法

2

張出し架設における自動測量技術の開発

角田晋相 宮澤祐蔵 民部田将弥 秋山 博

論文

PC 上部工の施工でよく行われる張出し架設工法は、進捗にともない荷重状態や構造系が変化し、逐次橋面高が変動するため、日々の橋面高さ測量により上げ越し量を管理する必要がある。また、張出し施工は移動作業車を用いたサイクル施工であり、型枠の測量や緊張管理、グラウト注入管理など、橋面高さ測量以外にも管理項目が多岐にわたるため施工管理者の負担が大きい。そこで、現場測量の省力化を図るため、トータルステーションを用いた自動測量技術を開発した。
現場における生産性向上の取り組みとして、開発した自動測量技術と併せて緊張管理およびグラウト注入管理のデジタル化技術を実施工に導入し、張出し施工における一連の施工管理の省力化効果を検証した。

key words:張出し架設、自動測量技術、生産性向上

3

中性固化材を利用した地盤改良 -新名神高速道路高槻高架橋東(下部工)工事-

鈴木孝幸

論文

本工事は、新名神高速道路高槻高架橋のうち、橋脚16 基を構築する工事である。このうち、橋脚2 橋脚を池内で施工する必要があり、締切内で掘削底面の安定を図るための薬液注入工法による底盤改良を実施する必要があった。この際、薬液注入工法の薬材および固化材が池内へ逸走・流出することを防止するため、締切外部の硬質地盤クリア工法により、圧入打設した鋼矢板周りの乱された地山に、中性固化材を利用した静的締固め工法(453 本、330.46m3)による改良を国内で初めて実施工に採用した。

key words:水中地盤改良、中性固化材、静的締固め(CPG)工法、汚濁水防止

4

東日本大震災の津波による水門・防潮堤の災害復旧工事 - 岩手県摂待地区海岸災害復旧(23 災598 号)工事 -

渡辺龍貴 小林友貴

論文

本工事は、摂待地区の住民を津波・高潮から守るために、摂待地区海岸の水門および防潮堤を復旧する工事である。三陸沿岸部は、近年明治29 年・昭和8 年・昭和35 年と3 度の津波被害を受けており、今回被害を受けた摂待水門は昭和53 年に構築されていたが、平成23年の東日本大震災の津波により翼壁等の一部を残しすべての構造体が破壊・流出した。今回の復旧工事は、摂待川の河川切替えにより左岸側を一期施工し、右岸側を二期施工で行った。
本報では、場所打杭工の掘削管理システムの使用およびカーテンウォールの長期耐久性向上対策について報告する。

key words:災害復旧工事、河川内施工、水門、防潮堤、カーテンウォール

5

国道158 号奈川渡改良 大白川大橋の施工 - R1 国道158 号奈川渡改良大白川橋上部他新設工事 -

宮澤祐蔵 民部田将弥 中嶋康晴 上田高博 佐藤千鶴

論文

本工事は、大白川上および一般国道158 号上を横架するPC 上部工および下部工を施工する工事である。本橋は、深い谷間を跨ぐ橋梁であり、施工ヤードが限られているため、A2 橋台、P1 橋脚および上部工を施工した後に、上部工を利用してA1 橋台を構築する特殊な施工順序となっている。上部工の施工は、移動作業車を用いた張出架設工法を採用しており、工事起点側(A1-P1)においては、桁下で交差する一般国道158 号の建築限界4.7m を確保するため、超低床型の移動作業車を使用して架設した。

key words:2 径間連続PC 箱桁橋、張出架設、超低床移動作業車

6

泥水式シールド工法による玉石を含む砂礫地盤の長距離掘進 - 浦安11 号幹線(1 工区)雨水管築造工事 -

山本博之 野村 剛

論文

本工事は、岡山市南部浦安排水区の浸水対策として、雨水を集水し流下させる雨水管渠を築造するものである。泥水式シールド工法を採用し、主に洪積砂礫層で玉石を含む区間を介在した地盤を施工延長3,722m 掘削した。到達はφ6.0m のライナープレート式円形立坑であり、到達坑口部にFFU 製ライナープレートを使用し、SEW 直接到達工法を採用した。
本報では、逸泥・切羽崩壊の防止対策、SEW 直接到達の施工について報告する。

key words:泥水式シールド工法、逸泥、切羽崩壊防止対策、SEW 工法直接到達

7

マンション工事における生産性向上 -(仮称)RJR 郡元Ⅲ新築工事 -

日髙英彬 尾薗拓弥 松野下大地

論文

本工事は、九州旅客鉄道株式会社発注の賃貸マンションRJR のシリーズ3 件目の工事で、JR九州在来線沿線での工事となる。
本報では、在来線沿線工事であるため近接工事期間の短縮および省力化、仕上がりレベルの統一化、施工管理の簡略化と社員の工程調整の労力削減およびIoT 活用により社員の管理労力の削減を図った施工について報告する。

key words:省力化、定常化工程、IoT 活用

8

狭隘地におけるオフィスビルの施工 -(仮称)PMO 神保町新築工事-

鍵市 祥 板垣紘介 深水耀介

論文

本工事は、既存躯体の解体から新築工事までであり、解体工事は新築工事に干渉する部分を解体し、それ以外は既存として残す計画であった。計画地は、北面に専門学校・東京電力変電所、南面に住宅、東西面は一方通行の区道に接している。南北面は近隣建物と近接しているため近隣とのトラブル、東西面は第三者災害に細心の注意が必要な立地であった。
本報では、既存躯体を利用した工夫、狭隘地における工夫について報告する。

key words:既存躯体利用山留・構台、サイトPCa、外部足場計画

9

物流倉庫床の品質精度向上への取組み事例 -ロジクロス座間小松原新築工事-

森本隆史

論文

物流施設の中ではフォークリフトなど、各種車両が日々繰返し走行するほか、近年では自走式のロボットによる物流倉庫の自動化も進んでいる。今後も物流業界における人手不足の課題解決に貢献する倉庫内ロボティクスはさらなる利用拡大が見込まれ、こうした物流倉庫の床面には高い耐久性と平坦性が求められる。このような背景の中、物流施設として求められる高精度の床仕上げ(平坦性、レベル精度)にこだわり床面の施工に取組んだ結果、本工事は国内で初となる英国コンクリート協会の定める床仕様基準における実用的な最高水準「FM2 クラス」を達成した。
本報では、国際基準の達成に向けて、床施工に関し注意したことや採用した施工法について報告する。

key words:国際基準TR34、鏡面仕上げ、コンクリート空気量

10

斜め鉄骨柱の建方とOSB 板型枠材によるRC 壁施工 -(仮称)流山おおたかの森B45 街区計画新築工事-

越智貴紀

論文

本工事は、流山おおたかの森駅西口エリアという商業地域に存在し、駅前ロータリーにおいてはシンボリックかつ地域自然と調和した外観として存在感を示している建物の設計施工工事である。自然が多く残るおおたかの森に相応しく、外構植栽や屋上庭園、各階バルコニー植栽など緑を多く配置、それのみならず各階3 面ともフロアごとに出入りが異なるフォルムとしてゆらぎのあるユニークなデザインとしている。ロータリーから見える鉄骨柱は、各階で角度が異なる斜め柱として木をモチーフにしている構造や、外壁では本来無機質であるRC 壁を、やわらかい表現を求め、OSB 板を型枠材として用いたRC 壁となっている。
本報では、その概要と検討・施工成果について報告する。

key words:型枠工事、RC 壁、OSB 板、鉄骨工事、鉄骨建方、斜め柱