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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2020-No.45

論文・報告

1

軟弱地盤における杭頭免震構法の適用性 -基礎梁の曲げ剛性を考慮した基礎構造の合理化-

相羽均修 五十嵐治人

論文

軟弱地盤上に建つ免震建物では、積層ゴムアイソレータの挙動を安定させるために、免震装置上下に剛性の高い基礎梁を設けた基礎免震構法が多く採用されている。一方、杭頭免震構法は、免震装置下部の基礎梁断面を縮小した合理的な構法であるが、軟弱地盤では地盤変位が大きくなるため採用されることが少ない。しかし、基礎梁の曲げ剛性を考慮し、杭頭部の回転変形を抑えることができれば軟弱地盤でも杭頭免震構法を適用できる可能性があると考えられる。
そこで、地盤条件の異なる軟弱地盤に対し、免震装置下部の基礎梁の曲げ剛性および配置計画を考慮して杭頭免震構法の適用性について検討した。その結果、軟弱地盤上の免震建物であっても、基礎梁の曲げ剛性を考慮し剛性の高い基礎梁と扁平梁を適切に配置することで、杭頭免震構法が適用できる可能性があることが分かった。

key words:杭頭免震、軟弱地盤、基礎梁、曲げ剛性、杭頭回転角

2

普通コンクリートに区分される高流動コンクリートの施工性能評価

薗井孫文

論文

運搬中のコンクリートのフレッシュ性状を連続的かつ高精度に推定可能であるコンクリートの連続品質管理装置(ドラム内部にプローブを装備したアジテータ車)を用いて、普通コンクリートに区分される増粘剤含有高性能AE 減水剤を使用した高流動コンクリートの施工性能を評価した。その結果、増粘剤含有高性能AE 減水剤を使用した高流動コンクリートは、これまで評価したコンクリート(中・高流動コンクリート含む)と同様、プローブ圧力とスランプフローやJリングフローとの間に強い相関関係があり、プローブ圧力による試験値推定から施工性能が評価できることがわかった。

key words:増粘剤含有高性能AE 減水剤、高流動コンクリート、プローブ圧力、Jリングフロー試験

3

高炉スラグ微粉末を混和材として用いたコンクリートの性状 その3 実機試験練りの試験概要とフレッシュ性状

薗井孫文

論文

建設業界においては、他業種よりエネルギーの消費量や二酸化炭素の排出量が大きく、特に構造材料として最も使用量が多いコンクリート分野では、二酸化炭素排出量の削減の課題は重要であるとともにSDGs の達成につながると考えられる。そこで、本研究では、高炉スラグ微粉末を幅広い使用率で混和材料として用いたコンクリートの性状を把握することを目的として実施した。前報1)その1、その2ではフレッシュ時および硬化後の性状を把握する目的として実施した室内実験について報告した。今回、建築物への汎用的な適用について検討するため実機プラントの試験練りを実施し実大モデル試験体の施工実験を行った。その3では、実機試験練りの試験概要およびフレッシュ性状等についての結果を報告する。

key words:環境配慮型コンクリート、高炉スラグ微粉末、フレッシュ性状

4

高炉スラグ微粉末を混和材として用いたコンクリートの性状 その4 実機試験練りの硬化後のコンクリートおよび強度設計

薗井孫文

論文

建設業界においては、他業種よりエネルギーの消費量や二酸化炭素の排出量が大きく、特に構造材料として最も使用量が多いコンクリート分野では、二酸化炭素排出量の削減といった課題は重要であるとともにSDGs の達成につながると考えられる。そこで、本研究では、高炉スラグ微粉末を幅広い使用率で混和材料として用いたコンクリートについて検討を行うことを目的として実施した。その3の実機試験練りの試験概要およびフレッシュ性状に引き続き、その4では実機試験練りの硬化後の性状および耐久性を考慮した強度設計について報告する。

key words:環境配慮型コンクリート、高炉スラグ微粉末、耐久性、強度設計

5

建築物の外装材に作用する風荷重に関する研究

安部 剛

論文

建築物の台風等による強風被害の多くは、屋根葺き材等の外装材に発生している。これらの被害を未然に防ぐには、対象となる外装部位ごとに、適切なピーク風力係数を設定して外装材用風荷重を求める必要がある。基規準に例示されていない外装部位の中で、設計者からの要望が多かった3つの事例について風洞実験を行い、外装材用風荷重の精度をより向上させるための基礎的な資料を整理した。

key words:外装材、風荷重、風洞実験、ピーク外圧係数、ピーク風力係数

6

南極・昭和基地の自然エネルギー棟に採用した空気式太陽熱集熱システムの性能

安部 剛

論文

建築空間に太陽熱を直接的に導入する太陽熱集熱システムは、一般的に太陽熱集熱効率が40~60%といわれ、太陽光発電のエネルギー変換効率15~20%より高い。しかし、極寒冷地での空気式太陽熱集熱システムの使用実績はまだ少なく、集熱システムの基本的な性能データ等の蓄積が望まれている。そこで、南極・昭和基地建物の中で初めて空気式太陽熱集熱システムを採用した「自然エネルギー棟」を対象に、極寒冷地における集熱システムの太陽熱集熱効率を確認した。

key words:南極・昭和基地、空気式太陽熱集熱システム、太陽熱集熱効率、集熱量

7

有限要素解析におけるトンネル発破振動の影響評価に関する検討

角田晋相 相羽均修 森川淳司

論文

山岳トンネル工事の施工では非常に硬い地山を掘進することが多く、掘削方法には発破掘削がよく用いられる。しかし、現地では発破にともなう騒音や振動が周辺に伝搬するため、環境対策が求められる。特に近隣に構造物がある場合は、振動による影響が懸念されるため、影響範囲を推定し対策を行う必要がある。一般に、発破振動の影響範囲は経験による推定式を用いて行われるが、計算に用いる指数や係数によって得られる値が大きく異なる。
そこで、地盤物性や地形に応じて伝搬する発破振動を表現するため、三次元有限要素法による動的解析を実施し、現地での計測結果との比較検討により解析値の妥当性を検証した。

key words:鉄骨梁、横座屈、床スラブ、シアコネクタ、有限要素法解析

8

光ファイバーを用いた充填検知センサーの長距離伝送化

角田晋相 吉岡圭介 松島 睦

論文

コンクリート打設やPC グラウト注入など充填性が品質に影響する施工においては、型枠やシース内部にセンサーを設置して充填状況を確認しながら施工することがよく行われる。
計測技術としては、プラスチック製光ファイバーを用いて光の強さを計測することで、センシング部の状態を確認するシステムが開発1)されており、コンクリートやグラウトの充填を検知するセンサーとしても実用化している2)~7)。
しかし、プラスチック製の光ファイバーはケーブル内を伝わる光の損失が大きく、充填検知センサーのケーブル長は数十m に限定していた。そこで、光ファイバーに与える光源とセンサー形状の見直しを行い、ファイバーケーブル内の光の伝送距離を長距離化することで、充填センサーの用途拡大を図り、シールド工事における二次覆工とセグメント間の中詰充填工の充填確認に適用した。

key words:光ファイバー、充填検知、裏込め充填

9

マサ土と花崗岩が輻輳した地盤における泥土圧シールドの掘進管理 -豊川用水二期西部幹線併設水路豊岡工区工事-

松田昌彦 森下康信 森 正嗣 渡辺 淳

論文

本工事は、完成から30 年以上経過し老朽化した豊川用水に併設して耐震性能を備えた水路(セグメント内径1,644mm)を新設する工事である。シールド工は、マサ土と花崗岩が輻輳した不均一な地盤での長距離(2,589m)掘進である。このため、シールドマシンの機能や既設水路下を掘進する2 階建て区間の対応等、事前のリスク対策について入念な計画が求められた。本報では、弾塑性FEM 解析を用いてシールド掘進に伴う周辺地盤の変形挙動について検討した結果および施工結果について報告する。

key words:泥土圧シールド、弾塑性FEM 解析、微動チェーンアレイ探査、音響トモグラフィ探査

10

高橋脚を有するPC3 径間連続箱桁橋の施工 -(仮称)新安家大橋-

立花勝利 細野順平 上田高博 角田晋相

論文

本工事は、三陸沿岸道路(普代~久慈区間)のうち安家川を跨ぐ231m のPC3 径間連続箱桁橋の上部工工事である。地域環境としては、安家川には「さけ・ます孵化場」があり、河川への影響がないように配慮が必要である。また夏には「やませ」と呼ばれる冷たい湿った風が海から吹く地域である。
本工事の上部工は、施工中の品質確保が重要な管理ポイントであったが、パイプクーリング、採光性パネル、超低粘性グラウト等の技術の採用により、コンクリートのひび割れ防止、正確なプレストレス導入、および確実なグラウト充填を実施することができた。また、張出し架設中の水平力を仮固定コンクリートの接触面の摩擦力で対応させるため、仮固定コンクリートの平面寸法が大きくなっていたが、ウォータージェット工法の採用により安全かつ確実にこれを撤去することができた。ここでは、(仮称)新安家大橋の高橋脚を有するPC3 径間連続箱桁橋上部工の施工に関して報告する。

key words:PC3 径間連続箱桁橋、橋梁上部工、張出し施工、品質管理、非対称張出、仮支承工

11

都心部における複合高層ビルの施工 -(仮称)北青山二丁目計画新築工事-

小林茂樹 鍵市 祥

論文

本工事は、故黒川紀章氏の設計で80 年代のファッション業界の象徴的な建物であった、「青山ベルコモンズ」の跡地に計画された高さ約100mの注目度の高い複合高層ビルの新築工事である。青山通りと外苑西通りの交差点に建つ本建物は、近くに新国立競技場もあり、再開発の進む青山エリアにおける新たなランドマークとして、また流行と文化の発信地「青山」という街のブランド力を高め、更なる賑わいを生み出す役割が期待されている。
本報告では、都心部における複合用途高層ビルの施工について報告する。

key words:高層鉄骨造、都心部施工、揚重計画、搬出入計画、安全対策

12

施工難度の高い立地条件での物流倉庫の施工 -(仮称)狭山日高IC 開発計画新築工事-

山﨑正健 熊田一希

論文

本物流施設の計画地は、俗にいうウナギの寝床のような立地条件(進入路が東面1 ヶ所、南面は3m の法面、北側は河川があり6m の擁壁、西面方向に350m の奥行き)である。本報では、このような施工難度の高い条件下で取り組んだ仮設計画、躯体工事の省力化工法、作業者間ミーティングの効率化事例について報告する。

key words:ジャバラユニット工法、ロールマット工法、PCa 化、移動式足場、現場管理システム