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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2018-No.43

論文・報告

1

PC グラウト一元管理システムの開発

角田晋相 告中修平

論文

PC グラウトは鋼材の腐食防止やコンクリートとの一体性を確保するため、シース内にグラウトを確実に充填することが重要である。PC グラウトの注入時には、注入作業が完全に施工されたことを確認するために、注入圧力や流量などの注入データを管理・記録する必要がある。また、近年ではシース内にセンサーを取り付けてPC グラウトの充填状況を確認することも多くなってきている。
そこで、PC グラウト注入作業の品質管理システムとして、PC グラウトの注入データとシース内の充填検知データを集約して管理する一元管理システムを構築し実用化を行った。

key words:PC グラウト、一元管理システム、注入管理、充填確認

2

既製開孔補強製品を用いた大開孔を有する基礎梁の曲げせん断実験 -高強度開孔補強金物の影響-

五十嵐治人

論文

鉄筋コンクリート(以下、RC)造の梁に設備配管を通す等、円形開孔を設ける場合、その直径は梁せいの1/3 以下に抑えることが一般的である。それに従った場合、基礎梁に設ける最大の円形開孔としては、人間が作業用に使用する人通孔が挙げられるが、この直径は最低でも600mm 必要となるため、梁せいはその3 倍の1,800mm 以上となる。しかしながら、構造耐力上はこれほどの断面が必要でない場合が少なくない。これについて、基礎梁の断面の省力化が可能となれば、躯体量は勿論、掘削量も低減でき、コストダウン、工期短縮、環境負荷低減につながることが期待できる。
本研究は、昨年に引き続き構造性能確認実験結果を考察し、特に既製開孔補強金物に高強度鉄筋を使用した場合の耐力、変形性能に着目した結果について報告する。高強度鉄筋は、降伏点強度が高く、部材が終局状態に至るまで降伏しない傾向があり、その際の評価方法に着目した。

key words:鉄筋コンクリート、基礎梁、貫通孔、高強度せん断補強筋、構造性能確認実験

3

昭和基地の自然エネルギー棟における空気式太陽熱集熱システムの検証

安部 剛

論文

本報では、2013 年2 月に昭和基地で建設された「自然エネルギー棟」に設置した空気式太陽熱集熱システムの概要を示すと共に、気象庁が公開している気象データ(日射量、外気温度、風向・風速、天候)と、太陽熱集熱システムの吹出・吸込口付近で実測した温度結果を用いて、空気式太陽熱集熱システムを検証したので報告する。

key words:自然エネルギー棟、空気式太陽熱集熱システム、太陽熱集熱効率、温度、風速、風向、全天日射量

4

ひ素・ふっ素用重金属吸着マットの開発

笠水上光博

論文

都市圏大規模開発や道路・鉄道のトンネル工事等で大量に発生する、ひ素や鉛、ふっ素などの重金属等建設発生土に対して、より合理的な処理方法が求められている。
「重金属吸着マット」は、主に北海道内で採用実績が増えている待ち受け型封じ込めの「吸着層工法」のプレキャスト版として位置づけられる。
本研究では、ふっ素対応の重金属吸着マットをJFEミネラル株式会社と共同開発し、実証試験(盛土暴露試験)を行った。また、既開発のひ素対応の重金属吸着マットについても、合わせて実証試験を行った。

key words:土壌汚染対策、環境保全、トンネル工事、自然由来土壌汚染

5

資機材搬入出用インクラインの計画と施工 -高低差40m 以上におけるアプローチ方法-

桐木俊之 野村典之 久次米唯

論文

帯金第1トンネルは、トンネル坑口が地盤高より約43m 上に位置するため、当初は仮桟橋を設置してアプローチする方法で設計されていた。しかし、トンネル終点側の上部工がPC橋から鋼橋に変更となり、桁材を運搬するトレーラーの走行が桟橋形式では不可能となった。そのため、取付け工期も短く、専有範囲も狭いインクラインを採用することとなった。
本稿は、インクラインが採用されるに至った経緯と概要および施工方法について報告する。

key words:仮桟橋、インクライン、施工精度、勾配、工期短縮、環境配慮

6

山岳トンネル工事における切羽安定化対策および安全対策事例報告

森川淳司

論文

奈川渡2 号トンネルは、梓川断層群(推定断層)に位置しているが、既往調査では露岩など確認されておらず、ほぼ全線で花崗岩が分布するとされているため、変形構造に伴う土木的問題は当初想定されていなかった。しかし実際は、地殻変動に伴う褶曲およびブロックの回転など著しい変形作用を受けており、これら変形作用と亀裂面の風化作用により、脆く岩塊となって崩れやすい状況下での掘削作業となった。
本報では、この崩れやすい切羽の安定化対策を目的に実施した各種補助工法の施工および切羽作業時の肌落ち災害防止対策で実施した事例について報告する。

key words:NATM、地質不良、補助工法、切羽肌落ち

7

動橋川橋りょうの上下部工事施工報告

村岡賢二 辻 浩次 松谷 満 中山雅雄

論文

北陸新幹線(金沢・敦賀間)については2023 年度開業予定であり、本工事は、北陸新幹線、高崎起点381km185m~383km981m(L=2,796m)間における新幹線高架橋工事である。当工事の中で、動橋川B(L=138m,2 径間連続PC 箱桁橋)はニューマチックケーソン工で橋脚基礎を施工し、1 渇水期内で橋脚まで完了させるという厳しい工程の中、施主からはケーソンの偏心量、傾斜量を精度よく管理し、沈設することが求められた。上部工に関しても、柱頭部では有害なひび割れが生じないようにマスコンクリート対策を行い、また、張出架設時には主桁コンクリートの耐久性を向上させるために打設後のコンクリート養生方法、PC グラウトの施工の工夫を行った。
本報では、これらの実施対策について報告する。

key words:ニューマチックケーソン工、マスコンクリート、張出架設工、養生、PC グラウト

8

ナイル川源流橋の施工

櫻井尚久 赤津基博 西尾嘉洋 中塚賢治 東海林瞬 町田 裕 石川正巳 田中好秀 秋山 博

論文

ナイル川源流橋は、ナイル川源流のビクトリア湖から2.5km 下流に建設された橋長525mの3 径間連続斜張橋であり、中央径間290m は日系建設会社が携わった同形式の橋梁としては最大級の規模を有する長大コンクリート斜張橋である。
約80mの高さを有する逆Y 字形主塔は、場所打ち杭により支持されており、主塔内斜材定着構造に鋼殻構造を採用している。主塔の場所打ち杭の施工では、硬岩からなる支持層への根入れを行うために補助工法を用いて全周回転オールケーシング工法により施工を行った。主塔脚部および主塔柱部の施工では、自動クライミングシステムを用いて施工を行った。
主桁は鉄筋コンクリート構造であり、大型移動作業車を用いた張出し施工により施工を行い、主桁を2 分割打設することにより工程短縮を図った。斜材には、現場製作ケーブルを採用してシングルストランドジャッキを用いてストランド1 本毎に架設・緊張を行うとともに、張力調整でも解放調整が不要なように検討を行い、シングルストランドジャッキのみで効率的に施工をおこなった。

key words:斜張橋、場所打ち杭、硬岩掘削、主塔、鋼殻構造、自動クライミングシステム、張出し施工、現場製作ケーブル、張力調整、モニタリング

9

持続可能型建設工事への取組み -南三陸町役場・歌津総合支所新築工事-

小野正人 今野昭宏

論文

南三陸町は震災からの復興をアピールすると共に、地元産木材のブランド力向上のため、本工事での「FSC®全体プロジェクト認証」を企画した。FSC®は、環境配慮型森林経営を即する目的で設けられた国際的な認証制度であり、プロジェクト認証の取得は国内の公共施設として初めてとなる。
本報では、この認証取得のために施工者として取り組んだ内容と、木の温かみが感じられる役場庁舎の施工について報告する。

key words:FSC®、認証材料、持続可能社会

10

都心の住居地域におけるPCa 積層工法住宅の施工

橋本雅夫 鍵市 祥 中野貴之

論文

本工事は、総合設計許可要綱による容積率の規制緩和を受けた都心の住居地域における18階建て鉄筋コンクリート造の集合住宅である。工事中の騒音振動、また埃の飛散等、近隣住民への影響を最小限にするために、フルPCa による積層工法で計画された。
敷地四面共に道路に接していたが、うち三面の道路は狭隘で、対面は戸建て住宅であったために工事車両が進入できず、施工に使用できるのは北側のみであった。その北面道路は搬入車両がやっと一台停車できる程度の余地しか無く、綿密な施工計画が必要であった。本報では今回の施工をもとに、当社で培ったPCa 積層工法の施工方法について報告する。

key words:プレキャスト鉄筋コンクリート造、積層工法、都心部住居地域