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プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2017-No.42

論文・報告

1

光ファイバーを用いたコンクリート充填検知システムの開発

角田晋相 原田尚幸 一井 崇

論文

コンクリート構造物の品質を確保するためには、未充填部などの欠陥を防止することが必要であり、施工ではコンクリートの充填状況を確認しながら打設を行うことが重要である。
現場では、型枠内に充填検知センサーを埋め込み、コンクリート打設時の充填確認がよく行われる。一方、計測技術では、プラスチック製光ファイバーを用いて光の強さを計測することで、センシング部の状態を確認するシステムが開発され実用化されてきている。
そこで、コンクリートの充填状況を検知する手法として光ファイバーによるセンシング技術の適用性について検討し、実用化に向けて開発を行った。

key words:光ファイバー、コンクリート打設、充填検知

2

アジテータ車ドラム内設置のプローブによるコンクリート施工性能評価

若林信太郎

論文

トラックアジテータのドラム内部に取り付けたプローブによるフレッシュコンクリート品質の連続管理を試みている。ここでは、中・高流動コンクリートを含む各種コンクリートを用いて、プローブによる測定値と各種施工性能評価試験結果を比較するとともに、コンクリートポンプによる圧送試験を行った。その結果、1)プローブ圧力と中・高流動コンクリートのスランプフローとの関係式を得られたこと、2)プローブ圧力とスランプフロー停止時間、L形フロー最大値、U形充填試験充填高さ等に相関がみられること、3)通常強度でスランプ管理のコンクリートの圧送性がプローブ圧力で評価可能なことが確認できた。

key words:コンクリート、アジテータ車、プローブ、スランプフロー、施工性能、圧送性

3

既製開孔補強製品を用いた大開孔を有する基礎梁の曲げせん断実験

五十嵐治人

論文

鉄筋コンクリート(以下、RC)造の梁に設備開孔等、円形開孔を設ける場合、その直径は梁せいの1/3 以下としなければならない。このため、基礎梁に人通孔を設ける場合、直径は最低でも600mm であるため、梁せいは1,800mm 以上必要となる。しかしながら、構造的にはこれほどの断面が必要でない場合が少なくない。これについて、基礎梁の断面の省力化が可能となれば、躯体量は勿論、掘削量も低減でき、コストダウン、工期短縮、環境負荷低減につながることが期待できる。
本研究は、開孔径が梁せいの1/2.5 の場合について実験的にその性状を確認した結果について報告する。

key words:鉄筋コンクリート、基礎梁、貫通孔、構造性能確認実験

4

南極昭和基地自然エネルギー棟における夏期室内温度の実測と解析の比較

安部 剛

論文

本報では、近年新築された「自然エネルギー棟」で採用した省エネ環境技術の紹介、昭和基地で夏期に実測した室内温度と共に、設計用スキルとして利用価値の高い数値流体解析(CFD)を用いて、南極での室内温熱解析における有用性を比較・検討した結果について報告する。

key words:自然エネルギー棟、室内温度、暖房、数値流体解析、空気式太陽熱集熱パネル、アルミ床暖房システム

5

安全裕度を考慮した軟弱地盤上の盛土施工

角田晋相

論文

軟弱地盤上に盛土を構築する場合、補強材の採用や圧密による原地盤の強度増加を見込むことで盛土の安定性が確保できるように設計される。一方、施工においては、設計強度を満足する材料を選定するため、実際の安全率には幾らかの余裕が存在する。また、地盤内の土質にはばらつきがあるため、設計時には安全側の土質定数を用いることが多い。そこで、設計時の安全率に対する施工時の安全率の差分を安全裕度と捉え、安全裕度の程度とその効果について検討した。本論文では、軟弱地盤対策として採用された敷網工の材料強度と原地盤の圧密による地盤特性に含まれる安全裕度を考慮して施工時における盛土の安定性を評価した事例について報告する。

key words:盛土、安定性、緩速載荷工法、安全率、安全裕度

6

不等径間を有するPC2径間連続箱桁ラーメン橋の施工 -大月バイパス桂川橋-

佐藤千鶴 一井 崇 八若幹彦 秋山 博

論文

大月バイパス桂川橋は、延長約3.2km に及ぶ国道20 号大月バイパス整備事業において、山梨県大月市を流れる一級河川桂川を渡河する橋長124.0m、最大支間73.750m のPC2 径間連続ラーメン箱桁橋である。本橋は、支間割りが48.450m+73.750m とアンバランスな構造を有しており、張出し施工において架設ブロックが左右非対称となっているほか、A2 側径間部が24.25m と長い構造となっている。このため上げ越し量の精度管理とA2 側径間部のコンクリートの品質確保が求められた。
本報告では、A2 側径間のひび割れ防止対策、コンクリートの充填性確保に関する工夫、支保工架設で用いた架設深礎の施工検討、ベント支保工の安全性確保など、施工管理の概要を報告する。

key words:不等径間、仮設深礎基礎、張出し施工

7

長距離・高水圧下の可燃性ガス・重金属を含む岩盤層でのシールド施工

鴇田睦雄 河内浩二 高崎 貢

論文

近年、シールド工事においては施工技術の進歩により施工延長8.0km の長距離シールド工事実績もでき、長距離シールド工事が多く発注されるようになっている、これに伴い新技術の採用・使用機器耐久性・施工性に対して各種検討が必要となってきている。現在、札幌市水道局発注の白川第3 送水管新設工事(山岳部)において、長距離施工に加え、高水圧下での可燃性ガス・重金属を含む地層のトンネル掘削をφ2890 泥水式シールドで施工中である。本報は、この工事における各種設備計画と、実際の施工状況について報告するものである。

key words:泥水式シールド、長距離、高水圧、可燃性ガス、重金属、防爆、破砕帯、寒冷地凍結防止

8

空頭制限下での鋼管矢板圧入

前田治彦

論文

中堤護岸改築工事のうち、橋梁(葛西橋)直下部での鋼管矢板の施工は、桁下から水面までの高さ6.3m 程度しかないため使用できる施工機械が限定された。また、既設護岸の変形が著しいため、既設護岸に極力影響を与えない施工方法とする必要があった。これにより空頭制限部の鋼管矢板は最大鋼管矢板長3.5m で分割し、継手は現場溶接と機械式継手とを併用した。また、施工方法は水上からの施工を基本とし、既設護岸に一番影響が少ない上部障害クリア工法(クリアパイラー)を採用した。

key words:空頭制限、水上施工、低水護岸整備、機械式継手

9

渇水期施工、急曲線トラス橋の精度確保を目的とした橋りょう上下部工の施工 -おおさか東線 神崎川橋りょう-

梅中治美 小倉淳司 西本 健 下道輝希

論文

神崎川橋りょうは、上部工:3 径間連続鋼製トラス桁、下部工:井筒鋼管基礎橋脚2 基、逆T式橋脚1 基、逆T式橋台1 基の橋梁である。下部工のうち2 基は河川内に構築する橋脚で、渇水期施工が条件となり工期的に非常に厳しい状況であり、上部工は急曲線(R=280m)鋼製トラス橋で、施工精度を確保する上で難易度の高い工事であった。本報では、下部工の基礎施工において、台船使用による鋼管打設と陸上からの桟橋架設を同時に施工して、渇水期の躯体構築期間を確保した事例と、上部工桁架設において3 次元測量、形状調整装置を利用しての修正等、施工精度を確保するために行った日常管理の手段を紹介する。

key words:下部工の渇水期工期短縮、上部工の桁架設精度の確保

10

地元産木材を多用した統合義務教育学校の施工 -(仮称)おおつち学園小中一貫教育校建設工事-

荒木陽一郎 井上克三 濱 一洋 川畑 翼 四役誠之 佐藤翔太

論文

東日本大震災の大津波で大きな被害を受けた岩手県大槌町で、震災後初めての大規模公共工事である「(仮称)おおつち学園小中一貫教育校建設工事」を施工した。津波で被災した小学校4 校と中学校1 校を小中一貫校として統合し、岩手県内で初の統合義務教育学校として計画、震災後の復興のシンボルの一つとして建設された。
本報は、狭い敷地に校舎等11 棟を建設する施工計画、大槌町産杉材を活用した大断面集成材製造手順、従来の木造建築の枠を超えた木造建築工法の木質二方向ラーメン構造「サミットHR 工法」を用いた施工について報告する。

key words:木質二方向ラーメン構造、サミットHR 工法、地元産木材活用

11

鋼管アーチで支持する吊屋根構造屋内球技場の施工 -駒沢オリンピック公園総合運動場(26)屋内球技場・第一球技場改築工事-

小林茂樹 女屋 智

論文

 「駒沢オリンピック公園総合運動場」は1964 年の東京オリンピックの第2 会場として使用された歴史を持つ、敷地面積約41 万3 千m2の総合スポーツ施設である。毎年多様なスポーツ大会が開催され、多くの都民がスポーツ観戦を楽しんだり、施設を利用して自らの身体を動かしたりと、スポーツ振興の拠点として重要な役割を担っているが、各施設は築50 年を超えるものが多く、老朽化が進んでいた。このほど、このうちの「屋内球技場・第一球技場」の改築を終えたので報告する。新屋内球技場はバスケットボールコート2 面が入る大きさで、観客席は約1,580 席(車椅子席含む)を有する。金属板と屋上緑化で仕上げる短辺約62m、長辺約84m、約5m のむくりのついた屋根は、高さ約28m の鋼管アーチ材から降ろしたケーブルによる吊り構造で、シンボル性のある外観を有している。

key words:屋内球技場、鋼管アーチ、屋上緑化、事前解析