JP / EN
プロジェクトストーリー

錢高組技報 ZENITAKA Technical Report

錢高組技報2016-No.41

論文・報告

1

低周波音低減装置「サイレンスチューブ®」の現場実証実験

角田晋相 笠水上光博 星野毅志

論文

山岳トンネルの施工では、近隣への環境対策として発破にともなう騒音の低減が求められる。現場では、発破騒音対策として防音扉が用いられるが、低周波音に対して効果を期待するには複数の扉が必要になるなど、コストアップの要因となる。
筆者らは、消音原理として開管の共鳴に着目した両端開口管による低周波音低減装置「サイレンスチューブ」を開発し実用化した。
本報では、実際の山岳トンネル現場での適用事例と実機における低周波音の低減効果について報告する。

key words:山岳トンネル、発破音、共鳴器

2

山岳トンネルの安全対策・省エネ制御システム「TUNNEL EYE」の開発

白石雅嗣 笠水上光博 安部 剛 星野毅志

論文

山岳トンネルの施工では、より一層の安全管理の向上に加え、昼夜を通じて施工機械や工事照明、換気ファンなどの多くの電気機器を用いるため、省エネルギー化が求められている。
そこで、筆者らは、トンネル現場内にIoT のネットワークを構築して、入坑者位置や作業環境濃度を常時監視し、作業状態を把握できるように施工機械の電力量などの情報をセンシングして安全管理の向上を図ったうえで、これらのデータを活用することで、工事照明と換気ファンを自動で省エネ制御するシステム「TUNNEL EYE」(トンネルアイ)を開発した。
本報では、システムを実際の山岳トンネル現場で試験導入し、安全管理を向上させた事例と、省エネルギー化を両立させた手法について報告する。

key words:山岳トンネル、安全対策、作業環境、省エネ、工事照明、換気ファン

3

微動チェーンアレー探査による支持地盤の推定

五十嵐治人 伊藤 仁

論文

近年、既製杭の支持地盤未達による建物の沈下、傾斜が問題となっている。これは、事前のボーリング調査などによる地盤の調査が不十分なために起こることであるが、支持地盤に起伏がある場合、これを十分把握できるように地盤調査を実施することは非常に困難である。
ボーリング調査などは、その結果の信頼性が高いが調査した1 点のみの情報しか得られず、これを複数箇所行うことである程度の連続性を持たせて対応することが多い。しかし、ボーリング調査は費用も高額となり、またどの程度の間隔で実施すれば問題なく支持地盤深度を推定できるかを判定することも難しい。
そこで、地表面の人為的なものによらない自然の振動から支持地盤を推定する手法として微動アレー、微動チェーンアレー探査に着目し、これを実施した。更にその後、実際に建設する建物の全杭位置において先行掘削を実施し、その結果との比較を行った。本報はその結果を報告し、今後の課題について述べる。

key words:微動アレー探査、せん断波速度、表面波、位相速度

4

南極昭和基地の自然エネルギー棟における夏期の温熱環境に関する検討

安部 剛

論文

本報では、自然エネルギー棟における夏期の室内温熱解析を行うために、必要な外気温度、全天日射量、外壁面・屋根面の熱貫流率、室内温度、相当外気温度を整理する。

key words:自然エネルギー棟、外気温度、全天日射量、熱貫流率、室内温度、相当外気温度

5

塗装の汚れ評価方法に関する研究 その1 -暴露試験および水接触角-

薗井孫文

論文

建物の高耐久化の要求に伴い、外装材においても高耐久化が求められてきている。外装材の性能評価指標の 1 つに汚れがあるが、これまで、建材塗装において汚れ具合を簡便かつ短期的に評価できる方法が確立されていなかった。そこで(一社)日本建築業連合会では、外装用塗装の汚れ評価に関する適切な試験方法の提案を目的に「外装材の汚れ評価に関するWG」を立ち上げ、16 社にて共同研究を実施した。その結果について2 編に分けて報告する。
本報では、汚れの実態を把握するために、乾燥形式、水溶性・油系等溶媒、上塗り材の種類などを組み合わせた32 種類の試験体を国内10 ヶ所の屋外に設置した暴露試験を行い、試験前後の汚れ具合を明度差、光沢保持率として測定し評価した。

key words:塗装、暴露、促進、明度、光沢、汚染、汚れ、前処理、水接触角

6

塗装の汚れ評価方法に関する研究 その2 -促進汚染試験と屋外暴露試験の関係-

薗井孫文

論文

建材塗装において汚れ具合を簡便かつ短期的に評価できる方法を(一社)日本建築業連合会において検討した。その1 においては暴露試験における各塗装種類の傾向と、汚れが水接触角に影響していることを確認した。引続き、その2 では、汚染物資を用いた促進汚染方法の前処理、汚染方法および除去方法の検証を行い、暴露試験と相関がある促進汚染試験を提案することができた。

key words:塗装、暴露、促進、明度、汚染、汚れ、前処理、水接触角

7

東九州道(清武~北郷)広渡川橋上部工の施工 -河川内施工、品質確保・向上にむけた対策-

東海林瞬 松川安美 枦川康久 角田晋相

論文

広渡川橋は、東九州道の宮崎県内(清武JCT~北郷IC 間)に架橋される橋長175.3m、最大支間63.6m のPC3 径間連続ラーメン箱桁橋である。本橋の施工方法は、P1 ラーメン橋脚からの張出し架設、A1 橋台~A1-P1 間およびP1-P2 間~A2 橋台の区間は固定支保工架設が採用されている。構造的な特徴としては、P2 支承は架設中と完成時で支持条件を変更可能な構造としている。P2 支承は地震時の水平力の分散化を図るため固定構造とするが、架設中に生じる不静定力を低減するため、架設中は一時的に解放して可動構造としている。本工事は非出水期のみの施工となり、実質1 年間のみしか主桁施工ができない中で、確実な施工による工程厳守と、品質確保を求められた。
本報では、工程短縮のための工夫、河川内施工における水質汚濁防止対策、張出し架設時および固定支保工架設時における主桁コンクリートのひび割れ防止対策、光ファイバーを用いたPC グラウト充填検知センサーによるグラウト充填確認など、PC 上部工の品質管理における実施例を報告する。

key words:張出し架設、固定支保工架設、ひび割れ防止対策、PC グラウト施工

8

ニューマチックケーソン工法による雨水調整池の施工

倉内信夫 藤本 修 友近宏治

論文

市街地でのニューマチックケーソン工法を用いた雨水調整池を築造する上で配慮した、①周辺への騒音対策、②躯体コンクリートのひび割れ対策、③異種生コンプラント混用による品質管理、④軟弱地盤での過沈下防止対策および沈設精度管理について報告するものである。

key words:ニューマチックケーソン工法、騒音対策、温度応力解析、異種生コンプラント混用、過沈下、沈設精度

9

狭隘地における鋼管杭圧入

郷田浩二

論文

本工事は、岩手県釜石市両石町において、東日本大震災で被災した両石漁港の防潮堤の復旧工事である。防潮堤はφ1500・L=22.5~26.5m の鋼管杭を圧入後、両面に被覆工(PC 版取付・中詰コンクリート打設)を施工する構造になっている。鋼管杭施工にあたっては、鋼管杭打設箇所の海側に漁港関係者の使用する臨港道路があり、車両の通行を確保しながら施工する必要があることから、ノンステージング工法での施工を指示されており、クレーンを打設した鋼管上を移動させることにより、作業ヤードを削減でき、一般交通に対する安全性の向上にもつながった。

key words:狭隘地施工、既設支障構造物同時処理、施工完了杭上利用、回転圧入

10

アルミドーム屋根構造のPC タンクの施工 -平原低区配水池築造その他工事-

松本哲弥 平田光彦

論文

平原低区配水池は旧平原浄水場施設を解体撤去し、その跡地に新設の標準型PC タンクを2 池築造する工事であり、アルミニウム合金製ドーム構造の屋根部を有する仕様で、当社でも数例の現場しか施工実績がない構造を採用している。また現場は住宅密集地で狭い一般道路を進入路とするなど地元に配慮する必要があった。今回はアルミドームだけでなく、PCタンクの施工に関しても報告する。

key words:PC タンク、アルミドーム、配水池

11

看護大学増築計画における施工BIM の試行 -福岡女学院看護大学設立10 周年記念館増築計画-

伊藤勇人 井上清行

論文

当物件は、設計施工案件取組に当たって設計BIM を取り入れたプレゼンを行い、競合他社と比べてであったがBIM でのプレゼンは当社のみで、その高評価が受注に貢献したとのことであった。
受注時の経緯を踏まえ、施工段階での本格的なBIM への取り組みを当社で初めて採用したので、今後の展開に向けて報告する。

key words:施工BIM、施工図、3D モデル、プレゼンテーション

12

サステナビリティを重視した震災復興公共施設の施工 -(仮称)南三陸病院・総合ケアセンター新築工事-

土田直行 三國谷勉 足立浩一 今野昭宏 小松弘幸

論文

東日本大震災後、宮城県南三陸町で初めての大規模公共建築工事である「(仮称)南三陸病院・総合ケアセンター」を担当した。この施設は、東日本大震災の大津波で壊滅的な被害を受けて解体された公立志津川病院に代わる町立病院として、南三陸町の医療、保健、福祉の拠点となるもので、「南三陸町震災復興計画」の最重要施設として位置づけられている。

key words:耐火集成材、湿式外断熱