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プロジェクトストーリー

Project Story 09 夢翔大橋

The Bridge Full of Innovation 構造とデザインが調和したエクストラドーズド橋

夢翔大橋

夢翔大橋は、大阪府枚方市と和歌山県新宮市を結ぶ国道168号の「辻堂バイパス整備事業」の一環として、奈良県五條市を流れる熊野川の上に建設された橋梁です。
Y字型に開いた優美な主塔の形状が特徴で、2010年度プレストレストコンクリート技術協会賞(作品部門)と土木学会デザイン賞2018奨励賞を受賞しています。
また米国の橋梁の教科書の表紙にも採用されています。

特徴 Features

1 構造 高強度コンクリートでスレンダーな橋梁を実現

夢翔大橋は主塔から張ったケーブルで橋桁を吊った「エクストラドーズド橋」という形式の橋梁で、似た形式の「斜張橋」と比べ主塔の高さが低く、構造的には「桁橋」に近い特性を持つものです。
本橋は山あいの急峻な地形にあり、地形改変による環境負荷の抑制やコスト削減のため、基礎をコンパクトにしています。本橋には高強度コンクリートおよび高強度鉄筋を採用しており、特に上部工(橋桁・主塔)で用いられた設計基準強度60N/mm2※の「高強度自己充填コンクリート」は、我が国の吊り構造の橋梁への初めての適用となりました。こうした技術の適用により、通常のエクストラドーズド橋よりも更に薄い橋桁を実現し、非常にスレンダーで軽快な景観を生み出しています。

※N/mm2(ニュートン毎平方ミリメートル):「断面積あたりどれだけの力に耐えられるか」の単位。60N/mm2は10cm角のコンクリート製の柱で約60トンの重さに耐えられる強さです。

側面から見た夢翔大橋。橋桁部分が非常に薄いことが分かる。
側面から見た夢翔大橋。橋桁部分が非常に薄いことが分かる。
全体一般図。特徴的なエクストラドーズド橋部分の上部工の施工を担当した。
全体一般図。特徴的なエクストラドーズド橋部分の上部工の施工を担当した。

2 Y字型のひみつ 機能、構造、意匠の「一石三鳥」

夢翔大橋の特徴はY字型に開いた「主塔」です。主塔は橋桁を支えるケーブルを吊るす部材で、構造的にもデザイン的にも重要なポイントとなる部分です。
夢翔大橋の線形(道路の形)は直線ではなく、緩やかな曲線を描いています。この曲線の橋桁に対して垂直の主塔からケーブルを張ると、カーブの外側のケーブルが道路の上にかかってしまい、自動車の通行の障害となります。この問題を解決するため、夢翔大橋は主塔を外側に開いた形にすることで、曲線であってもケーブルが道路にかからないようになっています。
またこの橋梁は道路が曲線であるため、橋桁を吊るすワイヤーにはカーブの内側に向かって主塔を引っ張る力(斜材張力)がかかります。しかし主塔を外側に開いた形にすることで、主塔自身の重さがこの内側への引っ張りに対抗し、相殺するという力学的にも合理的な構造になっています。
そして道路の曲線と高い橋脚、Y字型に開いた特徴的な主塔が一体となり、夢翔大橋の他にない印象的な姿を生み出しています。まさに機能、構造、意匠の「一石三鳥」のデザインです。

Y字型に開いた主塔
Y字型に開いた主塔
傾斜した主塔の自重でケーブルを内側に引っ張る力に対抗する。
傾斜した主塔の自重でケーブルを内側に引っ張る力に対抗する。

3 世界で認められた「夢翔大橋」 国際学会誌や米国の専門書の表紙にも採用

厳しい架橋条件、地形改変規模の縮小による環境保全とコスト縮減のための様々な検討、力学的に合理的で美しい姿などが評価され、夢翔大橋は国内では2010年度プレストレストコンクリート技術協会賞(作品部門)と土木学会デザイン賞2018奨励賞を受賞するなど、高い評価を頂きました。
また海外でも「国際構造学会」の会誌の表紙を飾り、当社社員が筆頭著者の論文が掲載されています※。
さらに夢翔大橋は米国にミシガン大学のアントワーヌ・ナーマン名誉教授の著書「Prestressed Concrete Analysis and Design:Fundamentals」の表紙にも採用されています。本書はプレストレストコンクリート構造の基礎を丁寧に分かりやすく解説した専門書で、アメリカをはじめ英語圏の大学生・大学院生および実務者に広く読まれています。夢翔大橋が本書に掲載されたきっかけは、国際構造学会の会誌の表紙および論文を読まれたナーマン教授から、当社社員である論文の著者に「是非、改定中の専門書に掲載したい」と連絡をいただいたことでした。大変名誉なことですので、快諾し、掲載に至りました。

※掲載論文:Hiroshi AKIYAMA, et al.: Extradosed Prestressed Concrete Bridge with High Strength Concrete, Japan - Yumekake Bridge -, Structural Engineering International, Vol.21, No.3, pp.366-371, International Association for Bridge and Structural Engineering, August, 2011)

国際構造学会 会誌 Structural Engineering International Vol.21(左) Antoine E. Naaman Prestressed Concrete Analysis and Design:Fundamentals(右)
国際構造学会 会誌 Structural Engineering International Vol.21(左)
Antoine E. Naaman Prestressed Concrete Analysis and Design:Fundamentals(右)

The Bridge Full of InnovationThe Bridge Full of Innovation

工事概要 Outline

  • 工事場所

    奈良県五條市大塔町

  • 事業主

    奈良県

  • 設計

    株式会社 長大

  • 工期

    2007年3月~2010年3月

  • 工事概要

    橋長290.0m
    支間長42.250m + 127.000m + 118.900m
    有効幅員10.510m ~ 13.552m
    平面線形R=200m~A=110m,L=58m ~ 5000m
    縦断勾配 2.470% ~5.000%
    横断勾配 1.500% ~6.000%
    主桁断面 1室箱桁断面