Project Story 08 ワルミ大橋
Bridge across the Strait 沖縄の海をひとまたぎ

沖縄を代表する観光スポットである「沖縄美ら海水族館」や世界遺産にも登録されている琉球王国時代の史跡「今帰仁城跡」等があるのが、沖縄本島北部の本部(もとぶ)半島です。
この本部半島と羽地内海(はねじないかい)に浮かぶ屋我地(やがじ)島の間の「ワルミ海峡」に架かるのが、2010年に開通した「ワルミ大橋」です。
架橋地点のワルミ海峡の名前は「割れ目」に由来する言葉とされ、本部半島と屋我地島に挟まれた狭く急峻で水深が深い地形が続きます。屋我地島の干潟には、高さ10mを超えるオヒルギをはじめとする3種類のマングローブ植物が生息するほか、チドリなどの渡り鳥も渡来する自然豊かな地域で、国指定鳥獣保護区に指定されています。
また台風時の船舶避難泊地に定められていることから、架橋にあたっては船舶の航行を妨げないことも重要な条件になりました。
こうした背景から海峡内の環境保全や景観保護にも配慮し、水路内に橋脚が無く、海峡を「ひとまたぎ」する形になる「上路式RC固定アーチ橋」が採用されました。
ワルミ大橋はコンクリートアーチ橋としては国内5番目、「合成鋼管アーチ巻立て工法」で施工されるアーチ橋としては国内最長の支間長を有する長大橋です。
特徴 Features
構造・工法
―鋼管とコンクリートで頑丈なアーチを構築
ワルミ大橋はアーチ形の「アーチリブ」により、上を走る道路の荷重を受け止める「上路式アーチ橋」です。橋全体の長さは315m、アーチ支間は210mにもなります。アーチは海峡の両岸に埋め込まれた「アーチアバット」という土台で支えられており、海峡内には一本も支柱がありません。
本橋梁の施工にあたって採用された「合成鋼管アーチ巻立て工法」は、まず鋼製の管でアーチ部分を構築し、その後鋼管内にコンクリートを充填、さらに鋼管アーチの外側にもコンクリートを巻立てることで、コンクリートと鋼という2つの材料からなる(=合成の)頑丈なアーチを構築するものです。
施工
―海を跨ぎ、210mのアーチを架ける。
鋼管はアーチ全体を30ブロックに分け、陸上で部品を組み立てて1ブロックずつのパーツを作り、海峡の上空に架け渡されたジップラインのような設備「ケーブルクレーン」で海上の施工場所に運び、計画通りの位置に設置後、ボルトを締めて固定します。この作業を30ブロック分繰り返し、まず鋼管製のアーチを構築しました。
続いてアーチ左右の根元部分の施工を行い、鋼管内にコンクリートを充填。さらに鋼管アーチを足場にして移動作業車(ワーゲン)で鋼管アーチの外側に巻立てコンクリートを施工しました。
巻立てコンクリートの施工後、アーチ上部に架かる「補剛桁」の施工を行い、路盤を施工。2009年10月に全ての桁の架設が完了しました。
海峡の上に張り渡されたケーブルクレーンでブロックを運び、繋げてアーチを構築していく。
オレンジ色の移動作業車(ワーゲン)により、鋼管アーチの上にコンクリートを巻立てていく。
環境保全への取り組み
―沖縄の豊かな海を守るために
上述の通り、ワルミ大橋周辺は干潟やマングローブ林などの自然環境に恵まれ、国定公園に指定されているほか、魚の養殖も盛んな地域です。施工箇所は沖縄県で多く見られる粒子が細かな「赤土(マージ)」で覆われた土壌で、海峡内に流出すれば水質汚濁を引き起こし、自然環境や漁業に大きな影響を及ぼします。沖縄県ではこの赤土の海洋流出が長年にわたり問題視されており、当工事においても流出防止に細心の注意を払いました。工事に使用する周辺道路は事前に舗装を行い、赤土が風で飛ばないようにしたほか、掘削箇所はシート養生を行い、雨による赤土の流出を防止しました。
またコンクリートの打設は大半が海上での施工となったため、コンクリートの落下防止やセメントの流出防止対策も徹底しました。
地域への貢献
―島国日本に欠かせない「橋」というインフラ
2006年12月の着工から4年後、2010年12月にワルミ大橋は無事開通式を迎えました。式典には名護市(屋我地島)と今帰仁村(本部半島)の両市村の関係者や地域の方々が多数参加し、テープカットのあと橋の渡り初めを行い、開通を祝いました。
また、ワルミ大橋は2010年度プレストレストコンクリート技術協会賞(作品部門)を受賞しました。この年には他にも当社施工の「余部橋りょう」と「夢翔大橋」も同賞を受賞し、当社施工物件によるトリプル受賞となりました。
数多くの島々からなる我が国において、国土をつなぐ橋梁は生活インフラとして非常に大きな役割を担っています。ワルミ大橋の開通により、本部半島方面から屋我地島等へのアクセスが改善され、観光業の振興発展や行政・福祉のサービスの向上など、地域の更なる発展の一助となることが期待されています。これからも当社は建設という事業を通じて、地域や社会の更なる発展・価値創出に貢献してまいります。
奥には古宇利島(左上)と屋我地島をつなぐ古宇利大橋も見える。ワルミ大橋の開通により、古宇利島から本部半島へのアクセスも大幅に向上した。
Bridge across the StraitBridge across the Strait
工事概要 Outline
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- 工事場所
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沖縄県 今帰仁村~名護市
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- 事業主
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沖縄県
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- 設計
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株式会社 建設技術研究所・株式会社 中央建設コンサルタント共同企業体
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- 工期
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2006年12月23日~2010年3月25日
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- 工事概要
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上路式RC固定アーチ橋
橋長315.0m(アーチ支間長:210.0m)