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プロジェクトストーリー

Project Story 06 京阪電鉄中之島線 第2工区

Underground Railway 大都市の地下で挑んだ鉄道工事

京阪電鉄中之島線 第2工区

大阪市中心部の中之島には大阪市庁舎をはじめ、日本銀行大阪支店などの官公庁や企業のオフィス、大阪市立中之島図書館や中之島公会堂、
大阪市立科学館国立国際美術館などの多くの文化施設が立地しています。
大阪と京都をつなぐ京阪電鉄「京阪本線」の天満橋駅から、この中之島を東西に貫くように建設されたのが、2008年に開業した「京阪中之島線」です。
当社はこのうち、中之島駅と渡辺橋駅の間の「第2工区」の建設工事を担当しました。

特徴 Features

1 開削工法による「渡り線部」 地上への影響に配慮しながら施工

当社が施工を担当した第2工区は地上から地面を掘り下げて構築する「開削工法」で建設する「渡り線部」(245m)と、シールドマシンにより地下トンネルを構築する「シールド部」(291m)のふたつの部分からなります。
開削工法による「渡り線部」は線路の切り替えポイントを含む部分で、掘削深さは地上16~19m、掘削する範囲の両側に土留め壁を造成し、路面を覆工板で覆い、路面通行を可能とした後に地下を掘削してトンネルを構築しました。現場の地中には水道や電気、電話線など多くの埋設設備が通っており、これらの防護や移設には細心の注意を払いました。また北側の土留め壁は中之島の北側を流れる堂島川から1.5mしか離れていない場所でしたが、慎重に施工をすすめ、無事出水が発生することなく工事を進めることができました。

線路の敷設が完了した「渡り線部」。奥に丸いシールドトンネルが2本見える。
線路の敷設が完了した「渡り線部」。奥に丸いシールドトンネルが2本見える。
施工中の地上の様子。地上の交通への影響に注意しながら施工を進めた。
施工中の地上の様子。地上の交通への影響に注意しながら施工を進めた。

2 「シールド部」の施工 直径7mのマシンが大都市の地下を掘り進む

「シールド部」は工場で製作したシールドマシンによって、地下を堀り進めながらトンネルを構築していくものです。当工事で使用したシールドマシンは外径約7m、前面のカッターを回転させ、地盤を掘削しながら前に進んでいくと同時に、マシンの後方に「セグメント」と呼ばれる壁面のパーツを組み上げながら、トンネルを構築していきます。
当工事で最大の特徴は「1台のシールドマシンで2本のトンネルを構築した」ことです。路線は上り線と下り線の2本が並行して走る形になるため、1本目のトンネルを構築してから、駅の中でシールドマシンを180度方向転換し、反対向きに掘り進んで2本目のトンネルを構築しました。

円形の断面を持つ「シールド部」のトンネル。手前はコンクリート製、奥の急曲線部は鋼製のセグメントで構築されている。
円形の断面を持つ「シールド部」のトンネル。
手前はコンクリート製、奥の急曲線部は鋼製のセグメントで構築されている。

3 シールドマシンの転回作業 330tの巨体が地下でUターン

1本目のトンネルは北側を走る「上り線」です。西側の中之島駅寄りの「渡り線部」から出発し、290m余りを掘り進んで隣の「渡辺橋駅」の駅部に到達しました。ここでシールドマシンを特製の架台に載せ、180度Uターン。架台には金属製のボールを仕込んだ「ボールスライダー」を設置。ベアリングのような機構でシールドマシンの330tにもなる重量を支えながら、なめらかな動きを可能にしました。180度方向転換をした後、今度は南側の「下り線」の掘進に着手しました。このシールドマシン転回作業は中之島新線全体では当工区が最初に実施され、当社としても初めての作業となりました。転回作業は発注者や各官庁、企業など多くの見学者が見守る中で行われ、無事方向転換を完了。2本目のトンネル掘削に出発しました。

架台に載せられ、転回作業中のシールドマシン。直径約7m、重量約330tの巨体がゆっくりと転回する。
架台に載せられ、転回作業中のシールドマシン。
直径約7m、重量約330tの巨体がゆっくりと転回する。

4 多くの工夫が詰め込まれた工事 より安全・効率的な施工を目指して

当工事ではそのほかにも様々な技術や取り組みが適用されました。シールドマシンが出発・到着する立坑そのものの壁面はシールドマシンでは掘れないため、従来はマシンの外径に合わせて扉付きの穴を開けておき、扉を開けてマシンを発進・到着させることが一般的でした。当工事では立坑の壁面の一部に高強度で耐久性に優れながら、シールドマシンでそのまま掘り進めることができる素材「FFU」を使用し、直接シールドマシンで壁に穴を開けて進んでいく「SEW工法」を採用。この工法の適用例としては最大径の実績になりました。

※FFU=Fiber Reinforced Foamed Urethane (繊維強化発泡ウレタン)
※SEW=Shield Earth Retaining Wall System (シールド直接発進到達工法)

完成してしまえば地表からは見えないトンネルですが、その構築には様々な工夫が詰め込まれています。ひとつとして同じ工事はなく、毎回新しい難しさや楽しさがあるのが建設業の醍醐味と言えます。
無事完成・開通を迎えた京阪中之島線は、今日も大阪市民の足として市民の皆様の生活を支えています。

2本目のトンネルの掘進を終え、下り線の到達部に姿を現したシールドマシン(右)。左側は先に掘削した上り線。
2本目のトンネルの掘進を終え、下り線の到達部に姿を現したシールドマシン(右)。
左側は先に掘削した上り線。
中之島の風景

Underground RailwayUnderground Railway

工事概要 Outline

  • 工事場所

    大阪市北区中之島

  • 事業主

    中之島高速鉄道 株式会社

  • 施工管理者

    京阪電気鉄道 株式会社

  • 施工者

    錢高組・三井住友建設・淺沼組共同企業体

  • 工期

    2003年3月~2009年3月

  • 工事概要

    施工延長 536m
    【渡り線部】
    開削トンネル(RCラーメン2層 1~2径間)
    施工延長 245m
    掘削土量 58,036㎥
    躯体コンクリート 16,329㎥

    【シールド部】
    泥土圧式シールド工法
    シールドマシン外径 6,950mm
    施工延長 291m(往復581.5m)
    単線シールドUターン施工