Project Story 01 大阪中之島美術館
Museum with Passage Inside 光あふれる「黒い箱」の美術館

2022年2月2日、水都大阪のシンボル「中之島」に大阪市の新しい美術館「大阪中之島美術館」が開館しました。大阪の新たな文化芸術拠点の誕生に大きな注目が集まっています。
大阪中之島美術館は1990年に準備室が設置されてから実に30年以上の年月を経ての開館となります。
美術館は6000点を超えるコレクションを収蔵し、モディリアーニ(1884-1920)や佐伯祐三(1898-1928)の作品など国内外の近現代美術のほか、
大阪を拠点とした前衛美術グループ「具体美術協会」に関するアーカイブズ資料や、近現代のデザインに関する作品資料などを豊富に所蔵しており、
大阪から世界へ、文化芸術の発信に、大きな期待が寄せられています。
特徴 Features
外に「閉じ」つつ内側に「開く」
黒い箱の中に溢れる光
美術館の建物はシンプルで存在感のある「黒い箱」の外観が特徴です。他にない特徴的な黒さが際立つ外壁は塗装ではなく、黒い顔料を混ぜ込んだコンクリート版を使用。ウォータージェットにより表面を削ることで黒色を長期間維持できるようにしています。
黒一色のインパクトの強い外観とは打って変わって、内部は明るい光に溢れた空間が広がります。1階から5階までの吹き抜けから柔らかく光が降り注ぐ立体的な「パッサージュ」により、「さまざまな人と活動が交錯する、都市のような美術館」を実現しています。貴重な美術品を「守る」黒い部分と、市民に対して「開く」光にあふれたパッサージュ、二つの相反する要素が互いを補いながら統合された形態が目指されています。



BIMをフル活用し
多彩で表情豊かな空間を実現
黒い箱が宙に浮かんだような外観が特徴的ですが、内部はパッサージュや大きな吹き抜け、自由度の高い通路など表情豊かな空間を内包しています。これらの多彩な内部空間を構築する、空中に浮かぶような上階部分の鉄骨を立てるために、複雑な施工が求められました。
当工事ではコンピューター上で建築物の3次元モデルを構築し、企画・設計・施工等に関する情報を一元化して活用する「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」を導入。鉄骨建て方のシミュレーションや構造解析を実施し、実際の建物の精度を光波や3次元測量で計測しながら、シミュレーション通りの施工を行いました。


「ひとつの建物」という枠を超えた
先進技術の導入で優れた環境性能を実現
本施設には環境に配慮した美術館を目指し、随所に様々な環境配慮技術が導入されています。堂島川と土佐堀川に挟まれた中之島の立地を生かし、河川水を利用した地域冷暖房システムを公設美術館として初めて導入。「ひとつの建物」という枠組みを超え、中之島エリアという地域として、全国トップクラスの省エネ・省CO2を実現しています。
そのほかにも設備面で様々な環境負荷低減技術を導入。また建築デザインの面からも、開口部の少ない建物のデザインそのものが冷暖房効率を向上させています。これらの取り組みにより、本施設は国立研究開発法人建築研究所の評価を通じ、国土交通省により「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択されました。
大阪中之島美術館には大阪市立科学館と国立国際美術館の二つの文化施設が隣接しており、いずれも当社が施工を担当しました。今回新たに大阪中之島美術館が当社の施工で完成し、今後さらに大阪の文化拠点としての中之島の価値が高まっていくことが期待されます。


Museum with Passage InsideMuseum with Passage Inside
工事概要 Outline
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- 工事場所
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大阪市北区中之島
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- 事業主
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大阪市
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- 設計監理
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株式会社 遠藤克彦建築研究所
大阪市都市整備局
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- 工期
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2019年2月~2021年6月
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- 工事概要
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S造(基礎免震) 地上5階建
建築面積 6,680.56㎡
延床面積 20,012.43㎡