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IoTで山岳トンネル工事の換気を全自動化

2017年10月 UP

国内初 伸縮ダクトと集塵機・換気ファンを自動で最適制御

当社は、株式会社イー・アイ・ソル、株式会社流機エンジニアリングと共同で、IoT(Internet of Things)を用いて、山岳トンネル工事の換気を全自動で最適化するシステムを開発しました。既に開発したエネルギーマネジメントシステム「TUNNEL EYE」(トンネルアイ)をバージョンアップし、近年普及が進む、伸縮ダクトによる換気方式(吸引捕集方式)に対応させました。伸縮ダクトを含めて、集塵機・換気ファンを全自動化した事例は、国内初であり、伸縮ダクトと換気装置の状態を自動で最適化することで、運転操作の省力化、作業環境の改善、省エネルギー化を実現しました。また、同システムには既に、安全情報の「見える化」の機能も備わっているため、安全や作業管理にも役立ちます。

今回開発したシステムは「TUNNEL EYE」適用3例目となる「奈川渡2号トンネル(その1)工事」(施工:錢高組)のトンネル掘削現場に初適用中です。

「IoT自動制御」システムの構成

「IoT自動制御」システムの構成

これまで、集塵機の伸縮ダクトはリモコン操作により、粉塵が発生しない場合には、作業に支障が出ないように、または破損させないように切羽後方まで後退させ、粉塵が発生する作業の場合は、粉塵吸引のために切羽まで前進させていました。同時に、粉塵が発生する作業の場合は、集塵機は吸引量を高め、換気ファンは吸引量よりも低い風量で送風し、切羽後方への粉塵の充満を抑制する風量調整を行う必要がありました。これらの調整は作業が変わる都度行う必要があり、伸縮ダクトの操作時期や、集塵機と換気ファン(以下、換気装置)の運転調整のタイミングが遅れると、粉塵などが切羽後方のトンネル坑内へ充満することがありました。また、発破直後は粉塵・後ガスが充満することや、見通しが悪いため、伸縮ダクトのリモコン操作を直ぐに行うことができませんでした。これらの操作を無人で自動化することで、省力化に加え、人為的な操作ミスや、操作遅れによる作業環境悪化を防ぐことができ、坑内入坑者の安全や健康被害防止に役立ちます。

本システムの概要と特徴

作業開始前に換気ファンの運転ボタンを押した後、換気装置と伸縮ダクト全ての自動制御が開始されます。その自動制御の一例として、発破検知センサーが発破を検知すると、自動で伸縮ダクトが切羽まで前進し、集塵機が高速運転で発破粉塵の吸引を開始します。その際、粉塵を吸引しやすいように、換気ファンは自動で適した風量(集塵機の吸引量よりも少ない風量)で運転します。設定時間経過後の粉塵濃度が下がった時期に、自動で集塵機が停止し、伸縮ダクトが後退します。同時に、発破で破砕したずりを搬出する作業工程を判断し、坑内全域の排出ガスなどを換気できる風量を送風するために換気ファンは自動で高速運転を開始します。

以上は、IoTネットワークを活用して自動制御しています。制御は、トンネル現場に複数の組込型制御端末を配置して、発破検知センサーなどに加え、入坑者や工事車両のICタグによる位置情報や、作業機械の電流値による稼働情報を収集し、遠隔地のサーバーで保存・分析することで、吹付けコンクリートやロックボルト打設などの作業工程を自動判別して行います。なお、従来は、粉塵計の濃度測定値が高くなると集塵機の吸引量を高めるなどの制御が行われていましたが、本システムでは、「粉塵濃度が高くなる作業工程」を判断して制御するため、粉塵濃度が高まる前に集塵機の出力を高め、伸縮ダクトを前進させておくことができます。また、実用性を高めるために、通常は全自動で換気制御を行いながらも、タブレット型端末により換気ファンの送風量などを変更できるようにしています。特に、一つのタブレット型端末画面のタッチパネルで、伸縮ダクト、集塵機、換気ファンの各々の状態を、容易に変更操作できるようにしています。

本システムを導入することで、エネルギーマネジメントの効果では、換気ファンで約3割、集塵機で約5割の省エネ効果を見込んでいます。引き続き、今後の建設工事における人手不足への対応、安全管理と作業環境の向上、地球温暖化対策の取り組みなどにおいて、IoTの積極的な活用や、自動化・ロボット化を推進していくことで課題解決に努めていきたいと考えています。

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