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国際核融合エネルギー研究センター建設工事がスタート

2008年08月 UP

核融合研究開発の世界的拠点
国際核融合エネルギー研究センター建設工事がスタート

エネルギー資源の確保が今、最も大きな社会問題として注目される中、核融合には長期的な安定供給だけでなく、環境問題の克服にも有効な将来のエネルギー源としての期待が高まっています。

国際核融合エネルギー研究センターは、核融合エネルギーの早期実用化に向けた研究開発の拠点の一つとして、独立行政法人日本原子力研究開発機構が建設するものです。2008年5月21日、現地において研究施設の建設安全祈願祭が挙行され、建設工事がスタートしました。
当社は、研究施設の建設を通じて、新エネルギー開発の超大型国際プロジェクトに携われることを大変意義のあることと考えています。施工に携わる全16社の代表(安全協議会会長会社)として、全工期中無事故で高品質の建物を完成し、ご期待に応える様に全力を尽くして参ります。

■ITER(イーター:国際熱核融合実験炉、International Thermonuclear Experimental Reactor)計画の概要
ITER計画は、平和目的の核融合エネルギーの利用が科学技術的に成立することを実証する為に、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです。ラテン語で「遠くへ続く道」を意味する「ITER」には、核融合実用化への道・地球のための国際協力への道という願いが込められています。
核融合は星や太陽のエネルギー源であり、ITERはこれを地上に実現する試みと言えます。ITER計画の目標は核融合炉に必要な技術を実用レベルまで高めること、すなわち三重水素と重水素という実燃料を用いて、大出力長時間の燃焼を行うことです。それには超伝導コイルなどいろいろな新しい工学技術が必要です。もちろん、核融合の安全性の実証も不可欠です。

■参加極
日本・欧州連合(EU)・ロシア・米国・韓国・中国・インドの七極

■ITER計画の経緯
1985年11月:米ソ首脳会談における核融合研究開発推進の共同声明
1988年~2001年:日米欧露の4極による概念設計及び工学設計活動実施
2005年6月:実験炉(ITER本体)建設地がフランス・カダラッシュに決定
2005年:中国(2月)、韓国(6月)、インド(12月)が参加
2007年10月:ITER建設開始(10年間)
2016年度~:運転開始(20年間)(予定)
ITER計画による核融合エネルギー利用が可能であることの科学的及び技術的な実証後、原型炉における発電実証段階へと進みます。
また2005年の政府間協議により、ITER本体の建設地はフランスのカダラッシュに決定しましたが、わが国は『核融合エネルギーの早期実用化に向けた幅広いアプローチ活動(BA)』において主要な役割を果たすことになりました。

完成予想パース

完成予想パース

建設地全景 2008年4月

建設地全景 2008年4月

安全祈願祭 2008年5月21日

安全祈願祭 2008年5月21日

ITER(イーター)鳥瞰図

ITER(イーター)鳥瞰図

概要

工事名 19青森ITER(BA)
国際核融合エネルギー研究センター管理研究棟他新築工事
工事場所 青森県上北郡六ヶ所村
発注者 独立行政法人 日本原子力研究開発機構
設計 株式会社 佐藤総合計画
施工 錢高組
完成 2010年3月(予定)
建物概要 鉄骨造 1~3階建て、3棟
建築面積 約5,100m2、延床面積 約8,400m2

■幅広いアプローチBA(Broader Approach)について
BAは、核融合エネルギー利用の早期実現を目指して、ITERと平行して補完的に取り組む重要な国際協力プロジェクトで、独立行政法人日本原子力研究開発機構が青森県六ヶ所村に建設する『国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)』は、その拠点の一つとなります。その施設と活動の概要は以下のとおりです。

・原型炉R&D*棟
原型炉の概念設計研究を実施し、原型炉の早期実現へ向けて、関連する研究開発活動を調整するとともに予備的研究開発を実施します。(*Research and development:研究開発)

・計算機・遠隔実験棟
スーパーコンピュータを用いて、核融合反応を起こすプラズマの状態、次世代核融合炉設計、先進材料開発などに関連するシミュレーションを実施します。また、フランスのITER実験施設と高速ネットワークを結び、この六ヶ所村の遠隔実験センターの研究者が、ITERの実験条件の提案・データ収集・解析などを行います。

同じく青森県六ヶ所村に設置される国際核融合材料照射施設工学実証工学設計活動(IFMIF/EVEDA)開発試験施設では、長時間の強力な核融合中性子照射に対する原型炉の耐久性などの性能実証を行う施設建設のための設計と工学実証試験を行います。

また、茨城県那珂市にある臨界プラズマ試験装置JT-60は1985年から稼動しており、核融合プラズマの研究開発において大きな役割を果たしてきましたが、同装置を超電導化してITERの支援研究と原型炉に向けた先駆的な研究を行うための装置(サテライトトカマク)に改造します。

■長期的エネルギー需要と供給の見通し
今世紀に入り、中国・インド等のアジアを中心とした世界経済の発展に伴ってエネルギー需要が急増しています。下の図に示した国際エネルギー機関(IEA)による長期予測では、今後も大幅な需要の伸びが予想されています。

一方、石油・天然ガス・石炭など、地球上に存在する化石燃料の量には限りがあり、これらの利用にはCO2の放出を伴うことから地球温暖化の原因にもなります。現在、水力・原子力による発電もかなりのウエイトを占めていますが、やはり資源として限りがあります。太陽光・風力などの利用も増えつつありますが、安定的に需要を満たすエネルギー源にはなっていません。

新しいエネルギー源への期待が高まっているのには、このような背景があるのです。

幅広いアプローチ計画(BA)の位置づけ

幅広いアプローチ計画(BA)の位置づけ

世界の地域別エネルギー需要見通し
IEA/WORLD ENERY OUTLOOK 経済産業省総合資源エネルギー調査会需給部会報告「長期エネルギー需要見通し」2008年3月より引用

化石燃料の確保年数
「核融合エネルギーの技術的実現性計画の拡がりと裾野としての基礎研究に関する報告書」2005年5月核融合会議開発戦略検討分科会より引用

■核融合エネルギーとは
核融合とは、軽量の原子核(重水素と三重水素)を高温高速で衝突させ、より重量のある原子核(ヘリウム)へと融合させる反応のことです。反応後には、粒子間の結合力が増すことによって合計質量はわずかに減少しますが、この減少した質量分のエネルギーがヘリウムと中性子の運動エネルギーとして発生します。これが核融合エネルギーです。

これは相対性理論で有名なアインシュタイン博士によるもう一つの重要な発見である『エネルギーは質量と等価である(E=mc2)』という原理に基づくものです。

■核融合エネルギーの優位性
核融合エネルギーには、これまでに実用化されているエネルギー源と比較して、以下のような優位性があります。

・管理面での安全性が高い
核融合反応は、現在原子力発電で実用されている核分裂反応とは異って連鎖反応がありません。燃料の供給を止めることで反応の継続を止めることが出来ます。
・放射性廃棄物の排出がわずかである
反応後の放射性廃棄物の量はごくわずかで、100年後には危険度は火力発電による廃棄物以下にまで減衰します。
・温暖化ガスの放出を伴わない
化石燃料を使用しないことから、施設製造時以外にはCO2を発生しません。
・半永久的に供給が可能
重水素と三重水素合わせてわずか1gから、石油8tに相当するエネルギーが得られます。燃料の重水素は海水中に豊富に存在(1m 3中に33g)し、もう一つの原料である三重水素は核融合炉内の次工程で製造されるので追加供給が不要です。したがって、核融合エネルギーが実用化されると人類は永遠のエネルギー源を得ると言っても過言ではありません。

これらの優れた特性を持つ核融合エネルギーは、地球環境対策及び近い将来予想されるエネルギー不足に対する有効な解決策として期待されています。

核融合反応(左)と核融合エネルギー発生の仕組み(右)

核融合反応(左)と核融合エネルギー発生の仕組み(右)

各種発電におけるCO2排出原単位の評価例

核融合で得られるエネルギーの量